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スメラギ
8

* * *



時は戻って、現在は授業時間。朝、教室の誰もを震え上がらせた宣戦布告を吐いた鈴は…、机に突っ伏し呑気に爆睡していた。

後ろの席である為、デューイの翼を枕代わりに顔を埋めている鈴の姿が丸見えの雅弥は苦笑して肩をすくめた。

すうすうと安らかな寝息をたてる鈴に、この時間の担当である数学教諭は物凄く物言いたげだ。
が、この教諭は授業初日にも同じように眠っていた彼に意趣返しのつもりで大学クラスの難問をぶつけ、既に玉砕済みである為に何も言えないようだ。

成績優秀者が集まっているB1クラスの人間の大半が匙を投げた問題を、ものの数秒で片付けてしまった鈴はやはりただ者ではない。…というか、正直勉強だけならば高校に行く必要はないのだろう、鈴は。


(…ほんと、変な子だよね鈴は…)


朝、あれだけのオーラを纏い不敵に笑ってみせたというのに、今は無防備極まりなく爆睡中。

まぁ、このクラス内、しかも授業中ならば危害を加えられる可能性はほとんどないだろうから良いのだが。

寝相は良いらしく、鈴は姿勢をあまり動かさない。未だに机に載せてある菊入りの花瓶やカエルが落ちる心配はとりあえずなさそうなのでよいが、鈴に枕にされているデューイが先ほどから微妙に声を上げているのが気になる。


「……あー、では問3。…新名、前へ出て解いてみろ」
「…あ、はい」


鈴をぼんやりと観察混じりに眺めていた雅弥は、急に教師から指名されて顔を上げた。

開きっぱなしだった教科書を確認して問いを確認すると、だるいなどと内心で思いながらも立ち上がる。
鈴ほどの超人ではないが、雅弥だって学年三席の秀才だ。別に授業を半分以上を聞いておらずとも、教科書の問題くらい容易く解ける。

ふと、自分が指名されたからか、後ろを振り向いていた御門と目が合う。
最前列に席がある彼は、雅弥の前で爆睡する鈴に目を止め、口パクで雅弥に話し掛けてくる。


『…起こしてやんねえのかよ』
『色んな意味で、無駄』


鈴にとってこんな授業など簡単過ぎるもののようだし、鈴は自分が起こしたくらいで起きるだろうか。起きたとしても、この様子ではそのまま二度寝されそうだ。

肩をすくめた雅弥は黒板に歩み寄り、カツカツとチョークで答えを出した。

教師の席に戻っていいとの許可に、また自分の席へ戻ろう鈴の隣を通ったら、彼はムクリと急に身を起こす。


「…わっ。…やっと起きたの?」
「ん…。…何か、不愉快な“気”を感じてね…」


呟いた鈴は、眠気のせいだろう、気だるげな雰囲気を纏いながら周囲を見渡した。


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あきゅろす。
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