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スメラギ
外部生と生徒会長

「…おかしいなぁ、僕が欲しかったのは“普通の学園生活”だった筈なんだけど…」


永峰鈴(ながみね りん)は、明日から通う事になる学園の正門を見上げながら、ぼんやりと呟いた。
蜂蜜色の柔らかい猫っ毛の頭に乗った小さな幼竜が、きゅぅ、と応えるように愛らしく鳴く。


「うん、やっぱりキミもおかしいと思うよねぇ、デューイ。…まず、こんな大きな門、どうやって開けるのかもわからないもんね」


竜王(バハムート)でも通れるのではないかと思える程、広く高くそびえ立った門。…その向こうに見える敷地更に広く大きそうだが、果たしてそれは“学校”に必要な広さなのだろうか?


(幾ら魔法実習をするにしても、これはやりすぎなんじゃないかなぁ……)


しかも、正門前から校舎は見えない。…方向が違うのか、それとも遥か彼方に遠いのか。

鈴は首を傾げ、頭に乗った幼竜、鈴の使い魔であるデューイも真似をして首を傾けた。その首輪に着けられた大きめな鈴が、チリンと凉やかな音をたてる。


「…まぁ、ココに来る事が決まった時点で“普通の学園生活”じゃあないんだけどね…」



デューイが主の頭を鼻先でくしくしと掘り、鈴はそれによって乱れた髪を直しながら呟く。

…明日鈴が入学する予定のこの場所、灯燈(とうどう)学園は魔法使いたちの中でも極一握りの上位階級、A・Bクラスの《ウィザード》を教育するエリート学校だ。
山一つ分の広大な土地を所有し、幼稚舎から大学までの男女別一貫教育。しかも、中高に至っては生徒全員が学内の寮に入るという、全寮制が定められている。


「…しかし、《ウィザード》ばっかり何百人も。集めようと思えば集まるんだねぇ…」


…この世界の99.9%以上の人間は、魔法使いの下位階級である《メイジ》だ。
極僅かの人数しか存在しない上位階級《ウィザード》など、ほとんどの者は目にかかる事もなく生きていくだろう。

ところが、この灯燈学園に通う人間は例外なくBクラス以上の《ウィザード》。天然記念物級に珍しい存在が、ここでは「普通」とされているのだ。


「…寧ろ、こうやって隔離されてるから、普通の街では《ウィザード》なんて見掛けないのかな」


などと、巨大な校門を前にしてのんびりと考察する。

鈴はマイペースに一度大きく伸びをし、頭の上から降りてきたデューイを振り向いた。


「……ところでこれ、どうやったら開くんだと思う?」


…もちろん、使い魔たる幼竜に訊いても答えなど返ってくる筈もなかった。


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あきゅろす。
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