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セントポーリア
5

「そう? …流石、役員さんはみんな優秀なんだね」
「まぁ、一応そう…ですネ」
「?」


何故か苦笑いしたソールに首を傾げた詩織は、執行部役員の“濃い”内情など知る由もない。

自分がその筆頭である事を棚に上げ、滅多に生徒会室にも寮部屋にも顔を出さないツチノコ会長や、生徒会室の真ん中で萌えを叫びまくる隠れオタク書記を思い遠い目をしたソールは、ふと思い出した行事に肩をすくめた。


「…あー、でもあと一ヶ月もすれば総会の準備で忙殺されるんですよねェ…」
「総会…あぁ、そうだね」


5月の文化祭と双璧を成す、生徒会の繁忙期である10月の生徒総会。

各クラスの実行委員などがいる文化祭とは違い、全面的に生徒会に運営が任されているだけあり、下手をすれば文化祭よりも忙しいかもしれない恐ろしい行事だ。


「……来月ばっかりは、月代を生徒会室に縛り付けておかねえと」
「?」
「ウチの会長サマですよ。…別に仕事をしない訳ではないんですけど、すーぐ居なくなるんですよねぇ」


仕事は持ち帰り最低限の義務は果たしているようだが、寮部屋にさえ帰らない月代は最近、生徒会役員たちの間でさえレアキャラ扱いだ。

全寮制でおいそれと外部に出られるような環境ではないので学内にはいる筈なのだが、一般生徒の目にも役員の目にも付かないとは、本当に一体何処に身を隠しているのか。


(やっぱ本命が出来たんだろうけど…、此処まで完璧に隠してるとかマジで誰なんだ)


いつか突き止めてやる、とやっぱり自分の事は棚に上げ決意するソールに、のんびりと擦った墨を置いた詩織が言う。


「会長さんか。…そう言えば、僕はほとんど見た事がないなぁ。どんな子だっけ?」
「成績も顔も良いですよ。…ブ厚い面の下で何を考えてんのかは、付き合いの長い俺でもほとんど分からないですけどネ」


マジで、と呟いて考え込むソールに、詩織はことんと首を傾げる。


「仲良しなの?」
「腐れ縁、ってヤツですヨ。…惣院幼稚舎の頃からの顔馴染みですからネェ」
「幼なじみなんだ」
「ま、そうですね」


微笑む詩織に、ひょいと肩をすくめる。

互いに悪友扱いしているが、付き合いは長いし、まぁ学内では一番の友人と言っていいだろう。

考えながら段々と秘密主義の友人に腹が立ってきたソールは、傍らの詩織にさえ聞こえない小さな声でボソリと呟く。


「……そんな俺に、本命を紹介する気はカケラもない訳だな、コノヤロウ」
「…?」
「あぁ、スイマセン、つい悪友への本音が」


首を傾げる詩織に、にこりと笑って返す。

純粋の塊のような詩織の耳に入るには到底似合わない言葉なので、ひらひらと手のひらを振って誤魔化した。


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あきゅろす。
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