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アットホーム・ラブライフ
second

お礼をさせて欲しい、とは言ったものの、まだ学生の俺が立派な社会人である牧野さんにお礼をするには具体的にどうすれば良いのだろう。

自分で頭を捻ってみたがいい答えが出ず、俺は牧野さんと同年代くらいだろう兄に相談する事にした。


「……、という訳なんだけど、どうすればいいと思う? 柳兄」
『うーん、助けてくれた人にお礼……ね』


電話を掛けた先は、実家で家業を手伝っている三男の柳兄さん。牧野さんと同年代くらいだろう、という事を差し引いてもその穏やかな性格から、俺にとっては一番相談事がしやすい兄だ。

他の兄たちが頼りにならない、という意味ではないけれど、長男の菊兄さんはちょっと堅すぎるし、次男の藤兄は頼りがいはあるけど対人関係の相談の場合はよく茶化してくるし、四男の牡丹兄も答えはちゃんとくれるだろうが絶対に茶化してくる。

俺の話を堅苦し過ぎず、茶化しもせずにちゃんと聞いてくれるのは柳兄だけなのだ。ちなみににたった一人の妹に情けない所など見せられる筈もないので、妹の桐に相談という選択肢は絶対に有り得ない。


『というか桜、痴漢に遭ったって大丈夫だったの? そっちの方が心配だよ』
「あ、それは大丈夫。ちゃんと助けて貰ったし」
『怖くなかった?』
「怖いよりも怒りが湧いた。牧野さんが間に入ってくれなきゃ、絶対にソイツぶん殴ってた」
『そう…? 大丈夫ならいいんだけど……』


そう言う柳兄の方が、俺よりずっと痴漢に遭いそうな見た目をしている。

地元で電車になんて滅多に乗らない生活をしているからいいけど、もし上京して普通に通勤とかで毎日電車乗るような生活をしてたら、かなり頻繁に痴漢に遭うんじゃないだろうか。……うん、改めて柳兄が実家で生活してて良かったと思う。

それはさておき、心配してくれる柳兄を宥めて俺は改めて本題に入る。


「で、俺にも出来るようなお礼。何かないかな?」
『うーん…。ハンカチとかネクタイピンとか、あまり高すぎない小物をプレゼントするとか、ディナーだと敷居が高すぎるからランチに誘ってみる、とか?』
「お、それいいな。流石柳兄」


そっか、ハンカチとかネクタイピンなら普段スーツの社会人でも使えるよな。…でも、ネクタイピンとか全然詳しくないから、ハンカチにするか。

あとは食事…。そこら辺のお洒落そうなカフェとかでランチなら、お礼になるかな。確かにディナーとかは敷居高いけど、ランチくらいなら俺でもなんとかなる……筈。春休みの間はしっかりバイト入れてたし、懐にはそこそこ余裕あるだろ。


『あぁでも、食事に誘うならちゃんと相手の都合を考えなきゃ駄目だよ。働いてる人なんでしょ?』
「うん、分かってるよ柳兄」


牧野さんは仕事も出来そうな人だし、もしかしたら忙しい身の上かもしれない。

無理に俺の為に時間を割いてくれ、とまでは言わないけど。


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