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アットホーム・ラブライフ
5

妙にマッサージが上手い雄飛だけれど、普段誰かの肩を揉んだりしているんだろうか。流石にそういうキャラではなさそうなんだけどな。


「…どうだ?」
「ん…、きもちい」
「……」
「…雄飛?」


訊かれたから素直に気持ち良いと答えれば、何故か一瞬雄飛の手が止まった。

思わず下ろしていた瞼を開けると、心なしかほのかに赤い雄飛の顔。どうかしたんだろうか?


「どうした?」
「……、いや」


ゆるりと首を振ると、先程よりもやや強く押し付けられる拳。ちょうど良い具合に肩の凝りの深い所に当ててくれているから、多少力が強めでも気持ちが良い。

思わず口から意味のない息が漏れる。


「あー、そこそこ」
「……」
「……藤兄、オヤジ臭いよ」
「っておい、オヤジ言うな」


正直自分でもちょっと思ったけども! でも流石にオヤジ呼ばわりされる程の歳ではまだないぞ! アラサーではあるけども。

雄飛は何も言わずに俺を見下ろしているが、その瞳がなんとも言えない。…いっそ桜みたいに思った事を言ってくれていいんだぞ。そしたら俺も反論出来るから。


「……しかし、相当凝ってたんだな」
「そんなに言う程凝ってた? まぁ確かに立ち仕事キツいし、自分で凝り解すのにも限界があるからな」


暫くマッサージに徹してくれていた雄飛が、やっと手を離してそう言う。

お陰で随分と肩が軽くなった俺は軽く肩を上げ下げしながら、雄飛を振り向く。


「ありがとう、雄飛。お陰様で大分楽になったよ」
「……あぁ」


身体が軽くなった喜びからにこりと満面の笑みで雄飛を見上げると、彼は照れくさいのかぶっきらぼうに頷いて視線を逸らした。

うん、今度疲れが溜まったら、整体にでも行ってみようかな。人にマッサージして貰うのって、かなり有効だ。

機嫌の良くなった俺は、少し背を伸ばして隣に並ぶ雄飛の頭を撫でた。切れ長の瞳が、驚いたように見開かれる。


「…ちょっ、何だよ」
「ん、ありがとう、って」
「ありがとうはさっき口で言ってただろ、離せって」


ふるりと首を振られて手を振り払われてしまうが、顔を見れば本気で嫌がられていない事は分かる。

クスッと笑った俺は、カウンターに肘をつきながら此方を見ている桜を振り向いた。


「雄飛の反応って、ちょっと桜に似てるよな」
「……そんな事俺に言われても」


ぱちりと瞳を瞬かせた桜は、俺の言葉に半眼になって応えた。

結構似てると思うんだけどな。桜と雄飛って。
俺はそう思うが、桜も雄飛も不満げである。


「……やっぱ弟扱い、か」


ため息混じりの雄飛の声は、隣にいるにも関わらず半分くらいしか聞こえなかった。

よく聞こえなかったけど、弟分の扱いは不服なのか?

首を傾げる俺の額に、雄飛の拳がコツンと当たった。


「コーヒー、お代わり」
「ん、あぁ」


マッサージのお礼に、お代わりはサービスにしておいてやろうかな。


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