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アットホーム・ラブライフ
3

「藤兄、仕事してる……」
「当たり前だろ」


此処は俺の職場で、時間的にも仕事の真っ最中である。まぁ、桜、雄飛を含めても現在店の中にお客さまは四組しかいないので、かなり暇な方ではあるが。

エスプレッソマシンの清掃が終わったらしいバイト君に、休憩に入っていいと告げながら雄飛の前に日替わりコーヒーを置くと、何故かもの言いたげな視線。


「雄飛?」
「……、誰?」


言って顎をしゃくったのは、彼から少し離れた席に座っている桜。

先程のやり取りが気になったのか。別に隠すような事は何もないので、そのままを告げた。


「弟だよ。ウチの五男」
「……ふぅん」


俺と桜の見た目は、似ていると言えば似ているし、似ていないといえばあまり似ていない。ようするに一目見て兄弟と分かる人には分かるが、分からない人は分からないだろうという微妙な類似だ。

雄飛は納得したようなしていないような、微妙な声をあげる。

すると、カフェラテを啜っていた桜が雄飛を見て自己紹介した。


「更科桜、こう見えても成人式は済ませてる大学三年」
「……あぁ」


名前と歳を告げた桜の言葉に、何故か納得したような短い声をあげる雄飛。

…どうせ童顔という共通点を見いだして、納得したんだろう。知ってる。桜は外見はどう見ても高校生か、下手すれば中学生だからな。高校一年生の雄飛の方が寧ろ年上に見えるくらいだ。

日替わりコーヒーをひと口含んだ雄飛は、やや無愛想に桜に名乗り返す。


「榎本、雄飛。高一」
「高一かー……身長たけぇな、羨ましい」


相槌を打った桜が、割と本気で羨ましそうな様子で呟く。

更科家は全体的に平均身長があまり高くない。俺も桜も170cmを越えられずに成長が止まったクチで(桜は未だ成長期は終わっていないと自称するが、弟の身長は彼が17歳の頃から1mmも変わっていない)、まだ15歳にして180cm近い上背を持つ雄飛は羨ましい限りだ。


「雄飛、前から思ってるんだけど、そんなにあるなら5cmくらい身長くれよ」
「やだよ。てか、どうやってやるんだ」
「それでまだ成長期終わってないんだろ? まだ伸びるんだろ? その足の長さくれ」
「無理だっての」


手にしたカップを弄びながらそんな風に冗談を言うと、雄飛は僅かに笑いながら返した。

いや、真面目にもう少し身長欲しかったんだよ。男としての矜持的な意味だけじゃなく、仕事でも便利だろうし。


「上の方の棚とか、背伸びすれば届かない事はないんだけど、最近背中とか腰にくるんだよな」
「藤兄、それって歳じゃねえの」
「うるさい、俺はまだまだ若いつもりだ」
「まぁ、見た目はな」


言いたい放題言ってくれる弟と、弟分に、俺は唇を尖らせる。

結構な死活問題なんだぞ、これ。


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