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アットホーム・ラブライフ
8

実際牡丹さんが酔っているかどうかは不明だが、俺の味方でない事は確かだった。……いや、美味しい状況を作り出してくれている辺り、ある意味俺の味方なのか? でも、どちらにせよ生殺しな状況だしな。

頭を抱える俺を余所に、俺の膝を占領する桐はその可愛らしい顔でじっと此方を見上げた。


「りょうや、ぎゅーってして、なでなでして?」
「えっ」
「牡丹にいが、柳にいにしてるみたいに。ほら、ぎゅーって」


言われてお兄さんたちの方を向いてみると、牡丹さんは甘えてくる柳さんを抱き上げて、膝に乗せてご機嫌に頭を撫でていた。いやいや、仲良すぎるだろ、これ実は牡丹さんも酔ってるだろ。

引きつる俺には構わず、膝の上の桐は抱っこを強請る。

……本人の希望なんだから、もういっちゃっていいのか? いやいや、所詮は酔っ払いの言う事だぞ? 桐と、彼女と似ている柳さんの反応を見るに、彼女たちは酔ったら誰にでも甘えるんじゃないか?

一応俺自身もアルコールが入っているが、コップ半分程度のワインではとても酔いきれずに俺はただ頭を抱えた。

いつまで経っても行動を起こせない俺に痺れを切らしたのか、桐がむー、と唸って頬を膨らます。


「りょうや!」
「はいっ?」
「りょうやは優しいけど、ちょっと優しすぎる!!」
「…はい?」


前から不満に思っていた! だなんて酔った勢いで、何かよく分からない事を言われている気がする。

優し過ぎる? まぁ、確かに桐相手にはいつでも紳士的を心掛けてきたけれど。

何故か怒られてきょとんとしている俺に、目を据わらせた桐が言う。


「まったく、私をどれだけ待たせる気なのか……」
「へっ?」
「……まったく、もう……」
「…桐?」


妙に意味深な言葉を発した桐は、まったく…と呟いた後沈黙した。そのままふにゃふにゃと、俺の膝の上に崩れていく。


「えっ、寝た!?」
「…むにゃ」


ちょっと、今の割と大事な所だったんじゃないのか!? 待たせてるって、どういう事!?


「色々訊きたいんですけど!?」
「まったくだな」
「あ」


寝落ちした桐に叫ぶように言うと、テーブルの向かい側から含み笑う声。

桐と同じく寝落ちしたらしい柳さんを膝に乗せた牡丹さんが、ニヤニヤとテーブルに肘を付きながら此方を見ていた。


「稜也君、今夜は呑み明かそうか?」
「……、えっと、はい」


笑った牡丹さんは、ワインの残りを俺たち二人のコップに注いだ。


長い夜に、なりそうである。


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あきゅろす。
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