アットホーム・ラブライフ
3
雄飛は末の妹である桐より年下だし、俺にとっても末っ子の弟が増えたようなものだ。
そう思うととても微笑ましい気分になって、俺は弟妹たちにするように雄飛の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「なっ、いきなり何だよ……!?」
ぎょっとして赤くなる反応は、下の弟である桜に少し似ている。
暫く兄弟たちの顔を見ていないのもあって、俺は何だか懐かしいような気持ちで雄飛の頭を撫で続けた。と言っても、すぐに真っ赤になった雄飛に手を振り払われてしまったのだが。
「……子供扱いすんじゃねえよ」
「まだまだ子供じゃんか。高校生なんてさ」
不満げな雄飛に、クスッと笑う。
中学生から高校生になると、何だかとても大人になったような気がするものだ。俺もそうだったから、なんとなく雄飛の気持ちも分かる。
けれど大学生を経験して更に社会に出ると、当時がどれだけ子供だったのかが分かるものなのだ。
ムッとする雄飛が可愛くて、ついまた子供扱いしてしまいたくなる。
「新メニューの試作品のケーキがあるんだ。サービスにしてやるから、食べるか?」
「…………」
「雄飛?」
「……、だから、子供扱いするなって」
そのふてくされたような反応すら可愛いものだ。
「食べないのか?」
「……、食べないとは言ってない」
不機嫌そうにミルクコーヒーを啜る雄飛に重ねて訊くと、ぶっきらぼうな返事が返ってくる。
その応えにまた笑って、俺は雄飛の頭をぽんぽんと撫でた。
「高校生は食べ盛りだからな。いっぱい食べな」
「……」
雄飛がまた不満の声をあげる前に、俺はケーキを取りに裏へと引っ込んだ。
カウンターから離れた俺には、雄飛の低い呟きは聞こえない。
「クソッ……そのうちぜってぇ、押し倒す」
奥へ引っ込んだ俺は冷蔵庫に入っていたケーキを取り出して、皿に出す。
バイトの青年も食べたがっていたので休憩時間に食べるように言って、残りをまた冷蔵庫に戻す。俺の分は仕事上がりにでも食べる事にしよう。
持ってきたケーキは、少し甘さ控えめのミルクレープだ。作るのに少し手間がかかるから週替わりメニューにしようかと思っているが、出来にはなかなか自信がある。
「お待たせ」
「……おかえり」
相当拗ねていたのか、据わった目つきをしていた雄飛の前にケーキを置く。
そのまま物言いたげな眼差しで此方を見つめていたが、俺が手のひらを見せてケーキをすすめるとフォークを取った。三角形に切られた頂点から、フォークを刺して口へ運ぶ。
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