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アットホーム・ラブライフ
鏡の中の女の子

「あーもう、それも可愛いっ! まったく桐ったらなんでも似合うんだからー……あっ、次はこのワンピース着てみてよ!」
「……もう帰ってもいいかい?」


右手にピンク色のリボンをあしらったワンピース、左手にレースたっぷりの生成色のブラウスを持ってきゃっきゃとハシャぐ友人に、試着室から顔を出した私はため息混じりに呟いた。

大学の友人である有里(ゆうり)に買い物に付き合って欲しいと誘われ、出掛けた講義のない土曜日。

自分から買い物に付き合って欲しい、と言った割には有里は自分が着る服はほとんど見ず、専ら私に服を持って来てはそれを合わせて試着させ、とそればかりを繰り返している。

…これはもう始めから、私を着せ替え人形にするつもりで買い物に誘ったのだろう。兄の一人に全く同じタイプがいるから、すぐに分かる。


「有里、そろそろ疲れてきたよ…」
「えー、まだまだ! ほらっ、このジャンパースカートも可愛いよっ」


言いながら彼女は、ケーキやマカロンといったお菓子柄のジャンパースカートを差し出してくる。

先程から有里が差し出してくる服は、所謂ロリータ系や姫系といった、ふわふわひらひらしたものばかり。…つくづく牡丹兄と気が合いそうだ。タッグを組んできたら面倒だから、絶対に紹介はしないでおこう。


「…まったく。そう何着も買うお金もないからね、次で最後にしてくれたまえよ」
「えーっ」


心底不満の滲み出た「えーっ」だ。…私が言いたい。

結構な時間を付き合わせた自覚はあるのだろう、有里は唇を尖らせながらも、最後という事で入念に服を吟味し始めた。

…彼女自身の服ではないというのに、だから何故にそんなにも真剣になれるのだろうか。


「……じゃあはいっ、これっ! 桐には絶対に似合う筈だよ」


やがて戻って来た彼女が持っていたのは、丈の長めな花柄のワンピースとオフホワイトのレースのボレロ。


「…二着ではないか」
「合わせた方が可愛いもん。ほらほら、着て見せてっ」
「…分かったよ」


彼女から服を受け取って、試着室のカーテンの中に引っ込んだ。

先程まで着ていた服を脱いで、有里いち押しのワンピースを被る。

身長が低めの私が着ると、丈が長めのそのワンピースは足首辺りまで裾がきてしまうようだが、全体のバランスとしては意外と悪くない。


「…ふむ」


その上からゆったりとしたボレロを羽織ると、なるほど、これはなかなか可愛らしいかもしれない。もちろん服の話だ。


「桐ーっ、どう?」
「あぁ、今開けるよ」


有里が呼ぶ声に、カーテンを開ける。

漁った服を店員さんと一緒に片付けていたらしい彼女は、私の姿を見るなり瞳を輝かせた。


「可愛いーっ! やっぱり私の見立ては間違いじゃないね! …もちろん、桐の素材も素晴らしいんだけど!」
「…お世辞を言うのか手前味噌を言うのか、どちらかにしたまえ」
「だって本当の事よ。ねぇ?」
「ええ、とても良くお似合いですよ!」


私が呆れ気味に肩をすくめると、有里は隣にいた店員さんに親しげに同意を求めた。いつの間にそんなに意気投合したのやら。

ひらりと揺れるワンピースの長い裾を捕まえ、私はちらりと試着室の中の姿見を見やる。

…友人に手放しに褒めてもらうのも吝かではないけれど、どうせ褒めてもらうのなら優しく笑ってくれるであろうあの人がいいな、と思う。


「…ではこの服、いただこうか」


どうせなら、家に帰ってからもう一度着てみよう。

鏡の中の私が、はにかむように微笑んだ。



鏡の中の女の子

(きっと今より可愛く、笑える筈だから)












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やっぱり難しい桐視点(笑)
桐とお友達のお話。季節は夏頃くらい。

桐は身長低くて童顔なので、可愛い系の服が似合いそうです。…反面、年齢が分からなくなりそうですがw

今度は稜也の友達も絡めたいw


11/7/8


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あきゅろす。
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