[携帯モード] [URL送信]

アットホーム・ラブライフ
日替わりコーヒーと日々

* * *



カランカラン、ドアが開いた事を告げるベルが鳴って其方を振り返ると、最近は毎日のように店に顔を出す少年の姿。


「いらっしゃいませ、雄飛」
「…おう」


俺が笑顔で出迎えると、ぶっきらぼうに短く応える学生服の常連客。

雄飛は俺が案内せずとも、慣れた様子でカウンター席に座った。


「いつもの?」
「…あぁ」


これまた短く頷く雄飛に、いつもの日替わりコーヒーの用意を始める。

作業をする背中に突き刺さる視線。そんなに見つめられたら穴が開く、なんて言葉もいい加減言い飽きてしまった。


「相変わらず、飽ないな」
「……日替わりで違うじゃねえか」
「そっちじゃなくて。俺が働いてるのガン見すんの、そんなに楽しいの?」


お陰で、雄飛にガン見されるのにはある程度慣れてきてしまった。見つめられるのに慣れるだなんて、何だか妙なカンジだ。

カップに日替わりコーヒーを注いで雄飛の前に置くと、やっぱり真っ直ぐに見上げてくる強い瞳。


「飽きねえな」
「そろそろ飽きようよ」
「飽きない」


やりとりにクスリと笑うと、コーヒーにミルクを入れてぐるぐると掻き混ぜる雄飛。

彼はブラックコーヒーは飲めないようで、いつも飲む前にミルクと砂糖を少しだけ入れる。下手をすれば俺より大人に見えるくらいの容姿に反して、なかなか可愛いと思う。

微笑ましい気持ちで俺が彼を見つめている間にも、やっぱり俺をガン見してくる雄飛。目が合って笑うと、彼はふっと俺から視線を逸らした。

雄飛は俺を見つめてくるくせ、見つめられると視線を逸らすのだから不思議だ。恥ずかしがり屋なんだか、そうじゃないんだか。

ミルクを入れたコーヒーに口を付ける雄飛を見、俺は仕事の為にカウンターの奥に下がった。バックヤードで作業をしていたバイト店員が、ニヤニヤとしながら俺に近付いてくる。


「店長、あのイケメン高校生、今日も来てるんですか?」
「あぁ、来てるよ。カウンターでいつもの飲んでる」
「コーヒーなんてただの言い訳じゃないっすか。あれ、絶対毎日店長が目的で通って来てるんですよ」


時折敬語が崩れる半大学生・半フリーターのそのバイト店員の言葉に、俺は曖昧に笑った。

自分でも、雄飛が此処に通う理由がコーヒーではない事くらい知っている。毎日真っ直ぐな視線をぶつけてくる雄飛に戸惑いながらも、一方では懐いてくれて嬉しいだなんて思っているのだから。


「まぁ、懐かれてるのは嫌ではないけど」
「えー、あれは寧ろ懐いてるってか惚れ込んでるんすよ。怪我してたトコを拾って一晩世話して介抱したとか! 店長ったらまじ天然誑し童顔!!」
「茶化すな、ってか童顔まったく関係ないだろ!!」


さり気なく失礼なバイト店員の頭を小突いて、俺は仕事に戻る。


≪  ≫

12/39ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!