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アットホーム・ラブライフ
3

カウンター席の一つに、ポツンと一つ、ソーサーに載ったコーヒーカップが置いてあった。ここに座れという事だろう。俺は素直にその席に腰を下ろした。

ブラックのままのコーヒーを見つめ、カウンター席の合間合間に置いてあるシュガーポットとコーヒークリームを引き寄せた。

コーヒーは嫌いではないが、ブラックではあまり飲まない。角砂糖とコーヒークリームを一つずつカップの中へ落とすと、ぐるりとスプーンでかき混ぜる。

コーヒーの色が変わると、俺はやっとカップを口元へ運んだ。芳ばしい匂いが鼻孔をくすぐる。


「……うまい」
「そりゃ良かった」


思わず小さく呟いた言葉に応えがあり、俺は顔を上げた。いつの間にか俺の目の前に立っていた藤が、にこりと機嫌良く微笑んでいる。


「喫茶店だからな。一応、コーヒーの味にはこだわりがあるんだ」
「……そうか」


独り言に近かった感想を聞かれていた事が少し気恥ずかしかったが、藤が嬉しそうなので誤魔化したり否定をしたりはしなかった。

なんでもないフリをして、二口目を口に含む。


「有り合わせだけど、サンドイッチとサラダ、あとスープな。何か苦手なものあったか?」
「…いや、平気」


キツネ色の焦げ目の付いたトーストサンドの具は照り焼きチキンで、小さめのサラダはレタスとトマト、スープはコーンポタージュだ。特に苦手なものはない、というか、照り焼きチキンは割と好物なので嬉しい。

コーヒーを三分の一程に減らすと、俺は早速用意された朝食へ手を伸ばした。此方をじっと見つめる藤の視線が気になるが、昨夜から何も食べていなかったせいで俺は腹が減っていた。


「……いただきます」
「おう、召し上がれ」


ニコニコし過ぎだろ。

藤の笑顔から目を逸らしながら、俺はトーストサンドを一口囓った。


「どう?」
「…うまい、けど」
「そっか、良かった」


ニコニコと嬉しそうに藤が頷く。

……やっぱりこの視線、やりづらい。


「落ち着かないから、こっちガン見すんの止めてくれ。……ってか、アンタの分のメシは?」
「…あっ、向こうであっためっ放しだ」


言われて思い出したらしく、再び後ろのキッチンへ戻っていく藤に、ため息を一つ。今のうちに食べてしまおう。

焼きたてのトーストサンドはなかなか美味しかったが、サラダとスープは可もなく不可もない普通の味である。此方に味の感想を求められなくて良かった。

やがてキッチンから戻ってきた藤は、カウンターの外へ出て俺の隣の席へ座った。朝食の内容は俺のものと同じだ。


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あきゅろす。
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