アットホーム・ラブライフ
花盗人の微笑
「更科さん、お荷物でーす」
「あぁはい。……桐ー、荷物らしいんだけど受け取っちゃってもいいー?」
「…あぁ、お願いするよー」
今日の夕飯当番は桐で、たまたま桐が油を使っていて手を離せない時に部屋のチャイムが鳴って。
とりあえず俺が出てみると、桐宛ての荷物が届いたらしいという訳で。
靴箱の脇にぶら下げてあるシャチハタ印を取って、爽やかなスマイルでダンボールを持ったお兄さんの持った受領書にポンと印を押す。
「ご苦労さまです」
「どうもー」
言いながら宅配便のお兄さんからダンボールを受け取ってみると、大きさの割には意外と軽い気がした。
何が入ってるんだろう?
「…稜也? どうしたんだい?」
「いや。…何か思ったより軽いなぁ、って」
「差出人は?」
キッチンから顔を出さないままの桐に訊かれ、俺は箱に貼られた名前を確認する。
「えーと…、更科牡丹……四番目お兄さんだっけ?」
「牡丹兄か。…なら、中身は服かアクセサリーだろうね。緩衝材に紙か何かが入ってかさばっているだけだから、軽いのだよ」
揚げ物が一段落したらしい桐が、菜箸を手にしたままリビングに出てくる。
「その大きさなら、服だろうね」
「ふぅん…。開ける?」
「お願いするよ」
「うん。とりあえず菜箸しまいな」
油が付いているそれを、軽快に振るのは止めてくれ。
言いながらガムテープを剥がし、ダンボールを開く。
中に入っていたのは、薄桃色の布地。広げてみると、それは可愛らしいワンピースだった。
「…牡丹兄は縫製が趣味でね、よく私に服を送ってくるのだよ」
「えっ、じゃあこれ手作り? …凄いな」
普通に既製品かと思った。…よくよく縫い目などを確かめてみると、寧ろ既製品よりしっかりとしていて細かい。
後ろから覗き込んでいる桐にワンピースを手渡すと、彼女は軽く自分の躰に合わせて見せてくれた。
「可愛い」
「…本当かい?」
「うん。…ピンク色似合うよね」
「あ、ありがとう…」
お世辞でも何でもなく、素直に褒めてやると、桐の頬がほんのりと染まった。
桐って案外褒められ慣れてないのかな? …でもお兄さんたちに猫可愛がりされてるみたいだし、そんな事はないと思うけど。身内以外には褒められ慣れてないとか?
桐が照れている本当の理由など露知らず、俺は首を捻った。
「……あ、服の他にも何か入ってる」
ふと開けたダンボールに目を移せば、透明なプラスチックの箱に入った白い造花。いや、造花というかこれは、コサージュ?
とりあえず箱から出して確認してみる。これも手作りなんだろうか、凄い細かいけど。お兄さんって何してる人なんだ。
「ん、稜也?」
「はい」
ワンピースを置いた桐の髪に、箱から取り出したコサージュを挿した。
ふぅん、白も似合うな。
「可愛い」
「……あ、ありがとう」
顔を赤くしてはにかむように微笑む仕草も、とても可愛い。
花盗人の微笑
(手折って、連れ去ってしまえたら)
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お兄さんずを名前だけでも出そうとしたお話(笑) そしたら稜也がただの天然誑しだった件 ←←
四男牡丹は医大生です。服飾センスはプロのレイヤーさん並みですが(←)、完全に趣味ですw ← インテリ系細マッチョだけど、乙男です(笑) 妹を着飾るのが大好きですw
進展してるようで進展しない、稜也と桐。そもそもSSの時間軸がバラバラなんですがね(笑)
11/8/18
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