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アットホーム・ラブライフ
ミルクココアにマシュマロひとつ

「突然だが、私は電車が苦手なのだよ」


言葉通り唐突なルームメイトの台詞に、俺は顔を上げる。

彼女は俺が与えたマシュマロ入りココアのマグカップを両手で包み込み、身長143cmという元より小さな躰を体育座りで更にコンパクトに折りたたんで、ソファーに座る俺を見上げている。


「…床に座ってるくらいなら、こっちに来て座ったら?」
「いや、私はこれで大丈夫だよ。クッションもあるからね」


ふるふると彼女は首を振る。…まぁ、お前がそれでいいならいいんだけど、俺は別にお前が横に居ても邪魔にはしないよ。

邪魔になる大きさには到底成り得ない彼女は、チョコレート色の甘そうな瞳をじっと此方に向けている。

…続きを話したいらしい。


「…で、電車が何だって?」
「あぁそうだ、電車は苦手なんだ。何故かと言うと、ほら、キミも知っているように私は身長が小さい」
「うん」


その反面、その小学生並みの身長には到底見合わない豊満な胸があるのだけど。…なんて言ったら、せっかく勝ち取った彼女の信頼をチャラにしてしまうからそこは思うだけに止める。

いやでも、仕方ないでしょう。健康な男なら、そのグラビア顔負けのプロポーションから全く意識を背けるなんて不可能だよ。それが出来る男はイコール女に興味が無いヤツだよ。

などと誰にでもなく一人言い訳する俺の心中など露も知らず、彼女は無邪気な瞳で俺を見上げて続ける。


「電車には吊革があるではないか」
「うん、あるね」
「…私はアレに掴まれないのだよ」


ふ、と小さな頬を僅かに膨らませ、不満そうに告げる彼女は可愛らしい。

思わずクスリと笑い声を漏らすと、ぷぅと更に膨れ面をするものだからこみ上げてくる笑みが止まらない。


「む、これは結構深刻なのだよ? 電車が揺れたら、すぐに転びそうになるし…」
「そっかそっか、くく…」
「稜也(りょうや)!」


怒った…というよりは拗ねたような声で俺を呼んだ彼女に、俺は耐えきれずに吹き出した。

…いやうん、だって仕方ない、可愛い。

むー、とすっかり拗ねた瞳で俺を見上げる彼女の頭を、俺はぽふぽふと優しく撫でて言った。


「桐(きり)」
「うん?」
「…何処か行きたい場所があるんなら、電車じゃなくて俺がバイクで連れて行ってあげるよ」


何処かに行きたいから、俺にこんな話をしたんだろ?

俺がそう言うと、きょとんとしていたチョコレート色の瞳がパッと輝く。


「…あっ、ありがとう! 実はだな、先頃オープンしたというカフェなのだが…」
「うんうん」


…週末は、妹みたいなルームメイトとのツーリングデートが決定らしい。

悪友どもには、後で呑み会のお断りメールを入れておかないと。



ミルクココアにマシュマロひとつ

(飲み干して、彼女が笑う)












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諸事情でルームシェアをしている、爽やか世話好きお兄さんと合法ろり巨乳ちゃんのお話(笑)
兄妹に限りなく近くて、でもお互いちゃっかり意識しちゃっている関係。…ルームメイトもの楽しいですw

ココアなんて飲んでいるので、季節は冬。4月入居なので、かなり仲良しになってます。


11/7/1


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