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書きかけ放置文まとめ
ブレイクダウン 3.5

「…ブレザー、見付かったのか」
「…高坂」


風変わりな後輩から返却されたブレザーに数日振りに袖を通し、廊下を歩いていると、ふと脇から友人の声がかかった。

振り向けば、風紀室のドアの横にもたれている音葉の姿。どうやら友人の姿に気付かず、脇を通り過ぎかけていたようだ。


「見付かった……って、別になくしていた訳じゃないんだけどな」
「そうなのか? でも、ここ数日ずっとカーディガンだったじゃねえかよ」


足を止め答えた海祢に、そう続ける音葉。

そのカーディガンは、今はブレザーを纏った腕の上にかけられている。カッターシャツ一枚では肌寒いが、ブレザーの下に更にカーディガンを着ていると少々暑い、そんな季節だ。


「まぁ、カーディガンも一応制服の一部だがよ、お前は生徒会長サマなんだから、制服くらいきちんと着てくれよ」
「あぁ、気を付ける」


そのナリで言うのか、と思わず言い返したくならない事もないが、風紀委員長としての形式的なお小言なのだろう。小さく笑いながら返すと、音葉も肩をすくめた。


「…で? なくしてた訳じゃねえなら、どうして着てなかったんだ?」
「人に貸していたんだ」


答えながら、抱き締めた後驚いたように丸くしていた黒珠の瞳を思い出す。

やる気がなさげで光の無い事が多いその瞳だが、虚を突かれたかのように見張られる様はなかなか可愛らしかった。


「ハァ? 生徒会長のお前がか? 誰にだよ?」
「俺よりも高坂の方が、よく知っているだろう子だよ」
「…は?」


ストレートに名前は出さず、やや遠回りに答えてみると、音葉は不審そうに眉を上げた。


「この前、紹介してくれただろ?」
「紹介……? ……っておい、まさか……」


有り得ない、といった瞳で此方を見てくる音葉に、小首を傾げる。

まだ付き合いが浅い為、海祢は真尋の人嫌いの性質を知らない。特に自身は知らないうちに真尋の『例外』に組み込まれているのだから、仕方のない事だ。

有り得ないものを見るかのような瞳で此方を見てくる音葉に、軽く肩をすくめる。


「高坂?」
「……、佐久間、まさか……まさかとは思うんだが、お前がブレザーを貸してた相手っつうのは……」
「ん?」
「真尋…じゃねえ、よな……?」
「あぁ、そうだ。真尋だ」


さらりと海祢が頷くと、音葉は愕然としたように口を開けた。


「……真尋が着てたブレザー、ナンか微妙に袖が長ぇとか思ったけど、おい、まさか……おい」
「高坂?」
「…、っていうかお前! 何ナチュラルに真尋って名前呼びなんだよ!?」


何故かそこに食いついた音葉に人差し指を突き立てられ、海祢は瞳を瞬かせながら返す。


「高坂はそう呼んでるじゃないか」
「いや、そうじゃねェ、確かにそうだけど、そうじゃねェ……」


いつの間にそんなに距離が近くなっていたのか。

この若干天然の入ったお人好しの男と、非常に扱いづらいひねくれた己の後輩との予想外の組み合わせに音葉は頭を抱え始めるが、海祢には彼のそんなリアクションの理由が分からなかった。


「……とりあえず、今日は飴を舐めてから休もうかな」














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海祢と音葉で間章。Vの直後の会話です。

ナチュラルに真尋呼びの会長さんw 次会った時に普通に名前で呼び、真尋をまたちょっとビックリさせますww


12/10/18

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