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書きかけ放置文まとめ
夜更かし

「あれっ、ツインの部屋、満室なんですか?」


今日の宿を取っていたリュートの声に、イサラは顔を上げる。

宿屋の受け付けの娘が少し困ったように、申し訳ないが今日はツインの部屋は満室になってしまったのだと告げている。


「…本日空いているのはダブルのお部屋か、シングルのお部屋になりますが…」


娘の言葉に、真っ黒なローブに身を包んだ相棒は、んー、と考えるように声を漏らし、後ろに立っていたイサラを振り返った。


「じゃあダブルでいいよね?」
「…私は構わないよ」


イサラが応えると、受け付けの娘がぱちりと瞳を瞬かせる。

もしかしたら、立っている姿からイサラを男性かと思っていたのかもしれない。

大剣を携え、スラリとした体躯を持つイサラは、実は黙って立っていると一見して性別不詳だ。声を出すと少し低めだが明らかに女性の声なので、喋ると驚かれる事が間々ある。

少し驚いた様子の娘だったが、リュートが宿代を訊くとハッとしたように接客に戻った。イサラは肩をすくめる。


「…お部屋は二階になります」
「だってさ。行こ、イサラ」


部屋の鍵を受け取って振り返ったリュートが、わざとらしくイサラの腰を引き寄せる。

振り返ると、改めて二人を男女のペアだと意識したらしい若い娘がほんのりと頬を染めていたのに、イサラは軽くため息を吐いた。


「…セクハラは止めておけ」
「えー? 触られるの嫌だった? 今更じゃない?」
「いや、私にじゃなくて。……分かっててやってるだろ」
「ふふ」


笑ったリュートの手を軽く払い落としつつ、宿の階段を上がる。受け付けの娘が見えなくなった頃、リュートがまた口を開く。


「でも、ダブルの部屋泊まるのちょっと久しぶりだね」
「そういえば、暫くはツインが続いてたな」
「逆にダブルの部屋が満室だったりしたよね。…あ、この部屋だ」


預かった鍵に記された部屋番号と同じ部屋を見付け、リュートが足を止めた。

二人で部屋に入り、まずは荷物を置く。少し長い街道を越えて町へ辿り着いた為、数日振りの宿である。


「…はぁ」
「んー、ベッド柔らかいねー」


早速部屋のベッドに寝転がったリュートが、ふかふかとその感触を楽しんでいる。

イサラもベッドの端に腰掛け、ひと息吐く。


「…ローブが皺になるぞ」
「んー」


ごろごろと広いベッドの上で転がる相棒に、呆れたように声をかける。

シーツに転がったままのアメジストの瞳が、じっとイサラを見上げてくる。


13/6/23

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