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書きかけ放置文まとめ
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「……お前は、何が好きなんだ?」
「…俺? 俺は、カスタードもホイップも好きだよ」


どちらも違った良さがあって、どちらとは白黒はっきりつけ難い。

そう答えると、音葉は意外と優柔不断だな、と笑った。けれどそういう話ではないと、ゆるりと首を振る。


「寝る事と料理を作る事、食べる事が好きなのは知ってるんだが。でも、それ以外でお前が好きなものは知らねェな、って思って」


唐突にも思える音葉の問いに、悠里はゆるりと瞳を瞬かせる。

確かに悠里は、あまり自分から自分の事を話したりはしない。相手にどんな味が好みか訊く事はあっても、自分の好みまでは言わない。そう言われてみれば、音葉にとって悠里は得体の知れない存在なのかもしれない。

そう思うと何だか微妙な気持ちになって、悠里は口を開いた。


「…嫌いな食べ物は、特にないよ。結構何でも好き」
「……偉いな」


何でも食べられるし、何でも作れる。

そう言うと、音葉に幼子に対するように褒められた。少しおかしくなって、悠里は口元だけで小さく笑う。


「食べ物以外で、好きなものは?」
「……、何だろう。昼寝は好きだけど」
「暇さえあれば寝てるよな。それは知ってる」


確かに同じ部屋で生活していれば、悠里の睡眠時間の長さは分かるだろう。

食べる事と、寝る事と。それ以外で何かと言われると、これがなかなか難しい。悠里の中で、如何に睡眠と食事が大きなものかが分かる。

あぁ、でも。


「そうだな、それ以外だと……絵、とかかな」
「…絵?」


音葉が瞳を瞬かせながら訊き返した。悠里は頷き、ほんの少しだけ微笑みながら続ける。


「たまにだけど、絵とか見に行くの…好きだ」


その絵が上手いだとか下手だとか、そんな芸術的な評価など悠里には欠片も分からない。けれどただ、キャンパスの上に誰かの手で描かれた風景や人物、場面をただ眺めているのが好きだ。

それ程頻繁にではないが、休日空いた時間などには一人で美術館や個展などに足を運ぶ事もある。自らそんな場所に赴くくらいには、絵は好きだと思う。


「絵、か」
「意外?」
「…まぁ、確かに意外だけど。いいんじゃねェか」


言葉にすれば妙に高層と言うか、優雅そうな趣味だ。実際ただぼんやりと眺めているだけで、そんな上品ぶった事など何もないのだけれど。


「別に何かする訳じゃなく、ただ見てるだけだけど」
「いいんじゃねェの。俺にはよく分からんが、そんなモンだろ?」
「…さぁ? 他の人がどう見てるかなんて、俺も知らないから」


他の人間の目線などどうでも良い。自分が眺めていた絵の世間での評価など、知る必要などない。

ただ、自分にとって静かな時間があればそれで良い。


13/11/8

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あきゅろす。
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