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蜂蜜砂糖 log
俺と八雲さんのお買い物 @

学校が終わって家に帰れば、八雲さんが綺麗に微笑んで出迎えてくれた。


「おかえり、綺」
「ただいま、八雲さん。早いね、もしかしてずっと居ました?」
「…昼までだったの」


学校が、という意味だろうけれど、それが本当なのか否かは実を言うとよく分からない。

俺と八雲さんは通う高校が違うから、細かい日程なんかは分からない。けれど今までの経験上、学校が昼までだったのは“八雲さんだけ”だという可能性もある。

…まぁ、別にいいんだけどさ。


「…あー、うん。じゃあちょうど良かった、八雲さん夕飯何がいい? ってか、今日夕飯いりますよね?」


ここは八雲さんの家で、生活費を出してるのも八雲さん(の家族。なんだろう、よく知らないが)なんだから、基本的に献立は八雲さんのリクエストを通す事にしている。

買い物して帰ろうかとも思ったけど、特別節約の必要はないから無理してセール品をやりくりしなくてもいいし、家に帰って八雲さんに訊いてから決めてもいいかと思ったのだ。

…それに、たまに八雲さん夜出掛けちゃって夕飯食べない事もあるし。

今日はどちらだろうか、と八雲さんを見れば、彼は美形全開な笑みで柔らかく言った。


「いるよ。…そうだね、オムライス、食べたいな」


また、可愛いチョイスを…。

八雲さんは見掛けと恐い噂に寄らず、オムライスだのハンバーグだのエビフライだの、お子様イメージなメニューが好きらしい。…それをまた美味しそうに食べてくれるから、作る側としてはギャップの可愛らしさに悶える日々だ。


「分かった、オムライスね。…卵がもう一個くらいしか無かったから、スーパーに行って買ってきます」


いつも月初めに一ヶ月分の食材費は貰っている。ちなみに金額は敢えて節約しなくても少し余るくらい。
無駄遣いもピンハネもしないけど、そこそこの贅沢はしていたたり。ちょっと高い卵とか、牛乳とか買っちゃったりしてね。

食費用の財布とエコバックを持って家を出ようと思ったら、いきなり八雲さんにむずと腕を掴まれた。

力に逆らえずつんのめった俺を、八雲さんの引き締まった躰がぽすりと受け止める。…何かお決まりになってきたなぁ、このパターン。


「どうしました?」
「スーパー行くんでしょ? 僕も行く」
「…へ?」


八雲さんが、スーパー?

一緒に暮らし始めてから四ヶ月程。八雲さんがスーパーに行くトコロなんか見たことなかった俺は、きょとんとしてしまった。(コンビニはたまに行ってる。たまに)

抱き止められているせいで目線の直ぐ上にある端正な顔を見つめ、俺は首を傾げた。


「スーパー、ってちょっと卵とかマッシュルームとか買いに行くだけだけど…」
「うん、だから僕も綺と行くよ」


荷物持ち、する? なんて笑顔で言う八雲さんを見て、俺の脳裏に浮かんだ言葉は一つだけ。


――マジか


【蜂蜜砂糖 そのろく】 09/7/15

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