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蜂蜜砂糖 log
シルクとコットン

艶やかな指通りの良い質感を楽しみながら、雅弥はぼんやりと思った。


「…同じ色でも、髪質は全然違いますよね?」
「…?」


同じソファーの隣に座っていた椿が、ゆるりと首を傾げた。拍子に、さらりとした感触が指先を擦り抜けていく。

甘そうな蜂蜜色の髪は、永峰兄弟の共通点の一つ。…だが、実際その質感は触れてみるとかなり違っているのだ。


「んー。…会長、ちょっと鈴借りてもいいですか?」


右手で椿の髪を梳いたまま、向こうのソファーに座った鈴と翡翠を振り向く。


「は? 構わない…というか、微妙な言い方だな」
「よく分かんないけど、そっちに行けばいいの?」
「うん、ちょっとこっち来て」


鈴はいつも通りに翡翠の膝の上に座っていたが、雅弥が手招くと怪訝そうながらもパタパタと駆け寄って来た。

鈴を見送った翡翠も雅弥に髪を一房掴まれたままの椿も、彼の思惑が分からず不思議そうにしている。

雅弥はやって来た鈴に、椿とは反対隣を示して言う。


「ちょっと此処座って。で、ちょっと頭借りる」
「え、うん」


頷いた鈴の頭に、するりと指を通す。ふわふわとした蜂蜜色。

右手で椿、左手で鈴の髪を撫でつつ、雅弥は言った。


「…違うんですよね、質感が」
「……髪質の話か」
「そうです。椿さんはさらさらしたストレートで、鈴はふわふわした猫っ毛だから、同じ色でも質感が全然違う」


不審げに見ていた翡翠の言葉に頷きつつ、言う。

撫で比べられている永峰兄弟は、互いに顔を見合わせて小首を傾げる。


「…蜂蜜色はお母さんの色なの」
「髪質はお兄ちゃんがお父さん似で、僕がお母さん似だよ」
「へぇ…。例えて言うなら、椿さんがシルクで、鈴がコットンって感じかな? こうやって比べてみるとちょっと面白いな」


艶やかなストレートの椿と、柔らかなくせ毛の鈴。さらさらふわりと、二人の髪を撫でる雅弥が笑う。

その様を見ていた翡翠が、頬杖をつきつつ言った。


「比べられるのは多分、お前一人だけだと思うぞ」
「……あぁ、そうかもしれませんね」


その言葉の意味を呑み込んだ雅弥は、クスリと笑った。

マスコット的な扱いである鈴の頭を撫でるのは、仲間内では皆がやった事があるだろう。しかし、椿の髪を撫でるのは雅弥一人だけだ。


「会長、妬いてます?」
「…さぁな?」
「鈴、そろそろ君を返却しなきゃ、会長が拗ねちゃうみたいだ」


自分より一年先輩の、尊敬すべき生徒会長の子供っぽい反応に、雅弥は笑いながら左手で鈴を促した。

翡翠の側に駆けて行った鈴は、何処か楽しそうに彼の顔を覗き込む。


「翡翠〜、怒ってるの?」
「…怒ってはいない」
「じゃあ、拗ねてるの?」
「…どうだろうな」


小さな鈴の躰をひょいと持ち上げ膝上に乗せた翡翠は、その頬をつつきながら無愛想に言った。…完璧に拗ねている。

そんな二人を見て雅弥が笑いを噛み殺していると、不意にくいと髪を引かれた。


「椿さん?」
「…もっと、撫でて」


コテッと小さく首を傾げて。無表情に強請ってみせる可愛い人に、雅弥はまた笑みを溢した。


「いくらでも、貴方の望むままに」



俺にとっては、貴方が一番ですから








永峰兄弟の髪質の違いについての話。…比べられるのは雅弥だけ、意外と羨ましいポジションな雅弥です。

サラサラ艶やかなお人形さんストレートと、ふわふわ柔らか綿あめ猫っ毛。どっちも味があって良いと思いますが、結局は自分の恋人が一番ですねw


雅弥は結構翡翠に一目置いてるけど、からかえる機会があるなら遠慮なくからかいます。ヤな後輩だな(笑)


【蜂蜜砂糖 そのに】 09/6/11

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あきゅろす。
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