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蜂蜜砂糖 log
貴方と優しい朝の話

…朝、というものが僕は少し苦手だ。

低血圧なのは両親共になので、どちらの血を継いだのかはよく分からない。…何故か弟の鈴だけは、朝もしっかり起きられるようだけれど。


「…ん…む……」


シャッ、と高い音がして世界に光が差す。

薄い瞼越しにも感じる眩しさに、僕は小さく声を上げて枕に顔を埋めた。

朝、なのだろうけど、まだ眠たい。


「椿さん、…椿、おはよう」
「ひゃっ…?」


ふかふかの枕にうつ伏せた僕の耳元に、ふっと吹き込まれる低い声。不意打ちのくすぐったさに、思わず変な声を上げてしまった。

重い瞼を幾度か上下させつつ顔を起こせば、悪戯っぽく笑う彼がいた。
いつもはレンズの奥にある黒珠と、至近距離で視線が絡む。


「…ぁ…、雅弥くん…おはよう」
「おはよう。…でもまだ寝てるね、椿さん」


クスリと笑った彼の指先が、寝ぼけ眼の僕の輪郭をなぞっていく。…そんな感覚すら、今の僕にはうとうとと心地好い。

するりと顎から目元へと滑った指が、額近くでいきなりそこを弾いた。


「ふゃっ!?」


…えっと、今“でこぴん”されたの…かな? 考えるより先に、びっくりして声が出ちゃった。

痛みというより衝撃で、睡魔は何処かへ飛んでしまった。

してやったりな笑顔で、雅弥くんが言う。


「…ふふ、おはよう」
「ぁ…うん、おはよう…?」


二回目だけど。…いや、一回目は僕が半分寝ぼけてたから、これが合ってるの?

ぱちぱちと瞬きを繰り返しながら、気だるい躰を起こす。…布団の外の空気は冷たくて、晒した肌がざわりと粟立った。


「…くちゅっ」
「…あぁ、ほら、早く服着ないと」


肌寒さにくしゃみをしたら、肩から滑り落ちたシーツをかけ直しながら、雅弥くんがシャツを手渡してくれた。思ったよりも寒かったから、早速それに袖を通す。


「コーヒーも淹れてきたんで」
「…あ、ありがとう」


差し出されたマグカップも、ありがたく受け取る。

ミルクを入れたそれは淹れたての熱々ではなく、猫舌の僕にもすぐに飲める温度になっていたから嬉しい。

マグカップを両手で包み込みながらそっと口を付けたら、こっちを見つめて微笑む雅弥くんと目が合って首を傾げる。


「…どうしたの?」
「いえ、何も」
「…そう?」


何も、と言った彼は何故か僕の頭を撫で、また微笑む。

…それが心地好くも少しだけ気恥ずかしくて、僕は手元のコーヒーを啜った。


「…ん、ありがとう」


飲み終わったカップは、僕が何か言うその前に回収されてしまう。

雅弥くんは良く気が付く子だと思う。…鈴程じゃないけど。


「…そろそろ起きられます?」
「うん」


ベッドの上で半身だけ起こした躰は、ホントは少し怠い。でも、だからと言っていつまでもベッドにいる訳にはいかないから。


「…っ」


起き上がろうとした躰が軋んで、小さく声を上げる。

至近距離にいる彼が気付かない筈はなくて、優しい腕が背に添えられた。


「…痛い?」
「…ちょっとだけ…」
「そうですか、…少し、やり過ぎちゃいましたかね」


そう言った雅弥くんは、昨夜のような雰囲気を覗かせて笑った。

…無意識に、頬が熱くなる。


「もう少し休んでます?」
「んーん、大丈夫だから起きるよ」


これくらいの痛みなら、耐えられない事じゃないから。

ベッドから床に足を付ければ、支えるように彼の手が僕の手を取ってくれる。


「雅弥くん」
「ん?」
「…おはよう」


…今朝は、これで三回目。だけど、何となく彼に言いたくなったから。


「おはようございます、椿さん」


彼もまた、朝陽より眩しく微笑んで応えてくれるのだ。












この二人がくっついた後は、こんな感じw 結構甲斐甲斐しいな、雅弥(笑) いや、寧ろ椿が世話を焼きたくなるようなタイプなのか?

雅弥×椿はくっついても、普段の呼び方は変化しません。もちろん呼び捨てで呼び合う時もありますよ、主にベッ(ry ←


…椿は天然でMだと思います ← そして自分がそうだという自覚もなく、彼氏がSである事にすら気付いてないと(笑)


【蜂蜜砂糖 じゅうさん】 09/11/20

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あきゅろす。
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