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蜂蜜砂糖 log
俺と八雲さんとピンクさん A

──……ピンクだ。それが、その人の第一印象。

何がピンクだって、頭だ。…頭の中身がピンクかどうかは、まぁ見ただけじゃ分かんないけど、その人はまず見た目、髪の毛が見事なピンク色だった。

ちゃんと脱色してから染めなきゃ、こんな鮮やかなピンク色にはならないんだろうなー、と俺がぼんやりと思っていると、玄関から入ってきたらしいその人は俺を見て顔をしかめた。


「…なーに、何してんのキミー。ココ、キミの家じゃないっしょー?」


うん、見た目を裏切らない緩い話し方だ。

…なんて感想はともかく、この人は誰なんだろうか。八雲さんの知り合い? …え、もしかしてこの人、俺の事不審者かなんかだと思ってる?

……いやいや、見た目的に不審者は俺じゃなくて明らかアンタでしょうよ。

人畜無害平凡っ子な俺を捕まえて…、などと俺がぶつくさ考えているうち、ピンクの人はリビングとキッチンの境目にいた俺を追い詰める形で迫ってくる。


「…どうやって入ったかは知らないけどー、…八雲のストーカーか? 餓鬼」


後半の台詞は、前半の軽さからは想像出来ないくらいに脅すように低く。

ガッと喉元を抑えつけられた俺は、キッチンの壁に押し付けられた。


「…ぐっ…」


“痛み”は生まれつき感じない俺だけど、壁に押し付けられて喉元掴まれてたら流石に息が苦しい。

息苦しさに顔をしかめると、冷たい表情を浮かべたピンクの人は、底冷えする視線で俺を見下ろす。

…ぁ、今気付いたけどこの人、八雲さんとはタイプは違うけど、かなりレベルの高い美形だなー。

なんて、軽く現実逃避。


「…言っとくけど、俺より八雲のがよっぽどえげつねぇよ? ボコボコにされたくなかったら、さっさと出て行きな?」
「…ぅ、ケホ…」


…嘘吐け、このピンク! 俺は八雲さんにこんな乱暴な扱い受けた事はねぇよ!!

言い返したいけど、器官が圧迫されて漏れるのは嗚咽ばかり。…ちょっ、マジでコレ息苦しい…。

俺は若干涙目でピンクの人を睨み返し……、キッチンから漂う香ばしい匂いに気付いた。

……うわやべっ、忘れてた!!


「! …いてっ!?」
「…ケホッ、…やっべぇ、ホットケーキ焦げる!!」


火事場の馬鹿力って、こんな感じか?

俺は自分でも意外な力でピンクの人の腕を押し返し、右手に持っていたフライ返しで彼の顔面をひっぱたいた。

怯んだピンクをそのまま突き飛ばし、急いで火にかけっぱだったフライパンの元へ駆け寄る。

人の顔面叩いたフライ返しなんて使えないから、フライパンを手前に引く中級者技術でホットケーキをひっくり返す。

…返ったホットケーキは、イイ感じのキツネ色。…ふう、ギリギリ間に合った…。


「…はぁ、セーフ…」


ほっとため息を吐いた俺に、一瞬で存在を忘れたピンクの人の唸り声。


「……おい、何なんだよオマエ」
「…あー」


…いや、だから俺的にはアナタが何なの? って感じなんだけどね。

フライパンの柄を握ったまま振り返ると、此方を睨むピンクの人。…いやー、もう面倒臭ぇ…。

訳の分からん人に家の中で絡まれるなんて、と俺がため息を吐いていると、此処でやっと家主の間延びした声。


「ただいま、綺。…って、どうかしたの?」


…あぁ、マイペースな八雲さんの声って無条件に安心するなぁ。


【蜂蜜砂糖 じゅういち】 09/10/2

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あきゅろす。
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