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蜂蜜砂糖 log
フキゲン日和

暗くて狭い場所を好んで収まる傾向がある、と言うのは知っていた(流石、まるっきり仔猫だ)。

…知っていた、けれど。


「ちょっ、明良ー!? 出といで〜!?」


押し入れの中の箪笥の隙間、という随分埃臭い場所に引きこもってしまった恋人を、利也は珍しく焦った声音で呼んだ。

薄暗い中で膝を抱えた明良は、此方も珍しく強気な姿勢で言い返す。


「ヤだっ! 俺は怒ってるんだからなっ!! …ツルギ、カガミ、タマっ、おいで!」


利也の呼び掛けをぶるぶると首を振って拒否した明良は、流石に一人での立てこもりが寂しいのか、恋人の愛猫たちを呼ぶ。

明良に懐いている…というよりは同族のように仲が良い三匹は、彼の呼び掛けに押し入れの中に駆け込んで行った。


「あっ、コラ! 裏切り者どもっ!!」


体格の問題上押し入れの中には入れない利也は、明良に擦り寄る愛猫たちに叫んだ。

パステルピンクの首輪をしたカガミを膝に抱えた明良の恨めしい視線に、ガシガシと頭を掻く。


「…あの〜、明良さん? 俺が悪かったので、出て来て頂けないでしょうか?」
「……ヤだ」


ほのかな薔薇色の唇を尖らせ、ぷいっとそっぽを向いて拗ねる姿は、堪らなく愛らしい。

今すぐに抱き締めてしまいたいくらいなのだが、生憎恋人は立てこもり実行中だ。


「……怒ってるん…だから」
「…うん、ごめんな」


体育座りの明良がぎゅう、とカガミを抱き締め、足下のツルギが膝に懐き、肩に乗ったタマが頬を舐めた。


──…コラ、タマ。それは俺のや


愛猫にまで嫉妬心を向ける利也は、入れないのは分かっていつつも押し入れの奥に手を伸ばした。

…隅っこで丸まった明良には触れられない。けれど、彼が手を伸ばしてくれたのなら触れられる距離だ。


「…俺が悪かった。謝るから、そろそろ出て来てくれ? お前に触れられないの、結構ツラい」
「……」


利也の真摯な声色に心が揺れているらしい明良は、ちらりと此方に視線を向ける。

微かに潤んだ栗色の瞳の縁を、今すぐに舐めとってしまいたい。


「…明良」
「………、しょうがないから、許してあげる」


押し入れの奥に伸ばした手の上に、小さな手のひらが重ねられる。

指先同士が触れ合った瞬間、利也はその手を握って強く引き寄せた。

ぽふり、拗ねて立てこもっていた愛しい人は、今は自分の腕の中だ。


「ごめんな…。愛してる、明良…」
「ん…、俺も……」


少しバツが悪そうに頬を染めた自分だけの仔猫に、利也は微笑んで仲直りの口付けを贈った。



…猫も喰わない痴話喧嘩に巻き込まれた神器の名を持つ猫たちが呆れて押し入れに立てこもりを始めるまで、あと三分












利也×明良の痴話喧嘩話(笑)

この二人は、かなりどうでもいい事で喧嘩をしてそうです。多分、今回の喧嘩の原因も「冷蔵庫に取ってあったプリンを勝手に食べた」張りに下らないものかと(爆)
感情の起伏が激しい子たちなので、すぐ喧嘩してまた仲直りして。巻き込まれる方も大変w


利也宅のにゃんこたちと明良は、友達的に仲良しですw 猫同士w


【蜂蜜砂糖 そのじゅう】 09/9/24

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