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世界はユートピア
3

「初めまして、高槻綾都です。いつも僕の梼がお世話になってます」
『さらっと所有宣言美味しいです。どうも、俺は藍川氷芽』
『美味しいですもぐもぐ。ウチは東條皐月です』


……、いやもう、敢えてツッコまないけどね!?

回線の向こうでメチャクチャによによしているさっちゃんひぃちゃんが見える気がする。てか、明らかに楽しまれてるし!

俺を抜きにして和気あいあいと自己紹介なんかしちゃっている幼なじみずと恋人に、俺はひくひくと頬を引きつらせた。何だこの蚊帳の外感。

俺の腹にがっつりと腕を回した綾都先輩は、躰を密着させて俺の口元に付いたマイクを勝手に私物化する。


「二人は梼と仲が良いのかい?」
『幼なじみですよ。…あ、でもご心配なく。俺らは貴方を応援してますから』
『独占欲溺愛王子様とか、ほんま美味しいです、ありがとうございます』


…おいおい。

まぁ、気持ちは分からないでもないけど……寧ろ俺も二人の彼氏(まだ正式にくっ付いてはいないらしいけど)の話だったら美味しく頂くけど…。

呆れ気味の俺の耳元で、くすくす笑う綾都先輩の声。


「ふふ、どういたしまして」
『うーん、爽やかさの後ろに見え隠れする腹黒オーラ…、流石!』
『溺愛ヤンデレなんですよね、分かります!』
「ちょ、実際彼氏が腹黒でヤンデレとかシャレになんない! 止めて!」


盛り上がる二人に、とうとうツッコミを入れた。

いや、確かにネタとしては超美味しいけどね!? 実際ヤンデレと付き合ってるとか怖すぎるから止めて! せっかく、時々見える綾都先輩の腹黒オーラからは目を逸らそうと努めてるのに!

…俺は平凡腐男子だから構う人間なんて綾都先輩くらいだけど(変わった趣味だよね、ホント)、これがもしひぃちゃんさっちゃんみたいな男女問わずにモテる美人さんだったらとゾッとする。

だって、先輩これで独占欲ハンパないと思うもん! 下手すりゃ権力をフルに使って監禁ルートとかも有り得そうで怖すぎる。

腐男子知識故に色々リアルに想像出来てしまい、俺はガグブルと身を震わせた。

…あぁ、俺ホント平凡に生まれて良かった…。


「梼、ヤンデレって何?」
「知ろうとしないで…。そして綾都先輩はそうはならないで…」


『溺愛』レベルで進化キャンセル連打しといて…。

無邪気に訊いてくる綾都先輩に、俺はふるふると頭を振った。

回線の向こうの腐レンズはけらけらと笑っている。…くそ、二人が正式に攻めとくっついたら仕返ししてやるんだからな、覚えてろよ!


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