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ショータイム! act.0

運命だなんて、陳腐な言葉、信じてなどいないけれど。

けれど、あの日、自分は彼に出逢った。


…それは、昂夜が14歳、朝霞が12歳。今から四年程前の話。





ビルの谷間に吹く風は、何処か冷たく湿っているような気がした。

薄暗い裏路地で、自分に絡んできた男たちを残らず沈めた少年は、ふと此方を見つめる視線を感じ顔を上げた。

…視線の先には、濃紺のランドセルを背負った、子供。地面に転がる男たちが放っていたような殺気めいた気配は感じられないが、こんな裏通りに小学生など、明らかに異質だ。


「…何見てんだ、テメェ」


少年、昂夜が睨み付けるように彼を見たが、子供は小学生とは思えぬ仕草で肩をすくめてみせるだけだ。


「いやぁ、あんまりにも見事な腕前だったのでつい見物しちゃった」
「…失せろ」
「まぁ、俺もそうしたいのは山々なんだけど、…そうもいかないんだよな」


ひょこひょこと軽い足取りで此方に近付いてきた子供に、鋭い殺気を纏った昂夜が唸るように言う。


「近寄るな。殴られてえのか」
「凶暴だなー、おにーさん。…俺はただ単に塾からの近道だから、この道を通ってるだけだって」


途中地面に転がる男の背を何事もないように踏みつけながら真っ直ぐに歩いてきた子供は、殺気立つ昂夜にやれやれと言うように首を振る。

昂夜は眉を寄せた。妙な子供だ。

この界隈は繁華街も近い事もあり、治安は悪い方だ。怪しい外国人が道で通行人を引っ掛け、水商売の呼び込みの声が耳に障り、柄の悪い少年たちが意味もなく路傍に溜まっている。

昂夜もつい先ほどまで、柄の悪い連中に絡まれていた所だ。まぁ、一人残らず返り討ちにしてやったが。

そんな通りを、ランドセルを背負ったこの子供は『近道』として通る。口振りからして、常用しているのだろう。


「…そんなナリで、腕に覚えがあるのか」
「見た目は関係ナイでしょー。…ま、それなりにな」


けらけら、笑ってみせた顔はまだまだ幼く、けれど普通の子供には決して無い色がある。

昂夜は興味を覚え、子供の顔を見つめた。

背丈の低い子供を見下ろせば、真っ直ぐな視線が見つめ返してくる。


「おにーさん、よく見なくてもイケメンだな」
「…お前は普通だな」
「フツーって偉大だぜ」


昂夜の皮肉染味た純粋な感想に、子供はニヒルに笑って応える。


「…お前、名前は?」


ますます興味を煽られた昂夜は、珍しく自分から他人に名を訊ねた。普段は他人の名など、欠片も興味が無いくせに。

珍しい昂夜の行為など知るよしもない子供は、紅い唇を歳に不釣り合いな程婉然と歪め笑った。


「おにーさんの名前を教えてくれたら、教える」


…その笑みに、引き込まれるような気がした。













結構前に書いた、ショータイム!、昂夜朝霞の出逢い話。書きかけのファイルがポロッと出てきたので、ちょろっと付け足してみた。

出逢った時から完成形だった朝霞(笑) 昂夜は反抗期真っ只中ですw



10/10/10

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