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古参兄弟の場合(仮)

「兄さん」


朝目を開けたら、自分の上に馬乗りになった弟の顔のドアップ。なんて、最早いつもの事にやり過ぎて驚く気にもなれない。

ハイドはまだしっかりと開かない瞼をぱちりぱちりと瞬かせ、此方を覗き込んで来ている弟の髪を軽く引っ張った。


「……、クロード、重いからどけ……」
「……」
「ほら、起きれないから……」


無言で大変不満げな表情を見せるクロードの頭を、今度は優しく撫でる。

槍騎士として鍛えている自分より体格の良い弟を払いのけて起き上がれる程の力は、魔道士のハイドには無い。


「…兄さん」
「はいはい、いい子だから退こうな」
「じゃあ、兄さんからキスして」
「……、はいはい」


自分よりも大きくなった弟は、もう少年だなんてとっくに言えなくなった歳になっても甘えん坊だ。

これがただの兄に対する親愛的な甘えだけではなく、色欲込みの恋愛感情を含むのが問題だが、その辺りはハイドにとやかく言えた事ではない。

強請る弟の言う通りに、ハイドはその頭を軽く引き寄せて唇を重ねた。触れるだけの子供じみたキスだが、クロードは馬乗りを止めてベッドの端に座った。


「……まったく」


いつから躰の上に乗られていたのか。軋む節々を誤魔化すように、軽く伸びをする。

そもそも隣のベッドは使った形跡すらない。昨夜はハイドの方が先に休んだ為、後から寝た筈の弟はやりたい放題である。

とりあえず寝間着から着替えようと襟元の釦を外そうとすると、横から伸びてきた手が手慣れた様子で片手で釦を外した。


「やってあげる」
「脱がすのだけか? …いらないよ。というか、下心しかないだろ」


囁くクロードの額をぺしっと手ではたいて、二段目からの釦は自分で外した。

露わになった肌に、クロードは何やらちょっかいを出したがっていた様子だが、「お前も早く着替えなさい」と言ってそれを制す。

朝から逐一彼のセクハラに付き合っていては、キリがない。不満そうなクロードの頭を撫でつつ、そろそろ時間かなと時計を見上げた。

――急にガタガタと騒がしくなる、向いの一室。今朝もクロノスのケンカップルの始めた、本日の第一回戦に、ハイドは伸びをしつつ立ち上がった。


「うん、そろそろ朝ご飯も出来た頃合いかな。行くぞ、クロード」
「…あいつら、ホント懲りないね」


呆れたように言うクロードだが、お前が言えた義理か、なんてハイドは思う。口には出さないが。

無言で肩をすくめて、先立って部屋を出ようとするが、その躰はクロードにすっぽりと後ろから抱き締められた。

あ、と思った時にはもう遅く。ちゅ、とかわいい音を立てて項に吸いつかれて……きっとくっきりと、痕が浮かんだ。


「…ん」
「……、まったく、もう」


襟足を手櫛で伸ばすようにしながら、ハイドはため息を吐いた。


それでもハイドは、たった一人の弟を拒めないのだ。


「駄目だなぁ、ホント」














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ケンカップルが暴れ出す前の、クロノスの古参兄弟のお話。

仲は良いしお互い想い合ってもいるんですが、未だに兄弟という後ろめたさがある兄と兄に依存し過ぎなヤンデレ弟。兄さんは弟のセクハラを軽くいなしてますが、夜は結局拒みきれずに好き放題されちゃう方です(笑)


14/5/28

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あきゅろす。
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