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ロリ戦士さんとロリコンエルフさんの話(仮) 6

それでもめげずに、ハロルドは目に付いたアクセサリーをミリスに持っていく。

ネックレス、指輪、ブレスレット、チョーカー、ブローチ、ete。煌びやかな宝石を手当たり次第に持って行ってみても、ミリスの琴線には微塵も触れないようだ。


「……宝石は駄目ですか?」
「だって、どれも高価なものだろう? 私が着けていたら傷を付けてしまいそうだし、重いから要らない」


何個目かのネックレスをハロルドの方に突き返すと、ミリスはふるりと首を振った。

値段など、ハロルドが出すのだから気にする事はないのに。けれど彼女は首を縦に振る事はない。

肩を落としたハロルドの目に、ふと別のコーナーが映る。宝石類が中心のアクセサリーコーナーとはまた全く雰囲気の違う、レースやサテン、シルクなどで出来た多数のリボンが並ぶ一角だ。


「あ」
「ん?」


小さく呟いたハロルドの声に、待つのに飽きたのか手持ち無沙汰にしていたミリスが顔を上げる。

その大きな深緑の瞳と同じ色、甘く焦げたカラメルのような茶色の髪に似合うのではないだろうか。

ハロルドが手にした、深い緑に銅色の縁取りがされたシルクのリボンに、ミリスもゆるりと瞳を瞬かせる。


「……ではこれなんて、如何でしょうか?」
「……」


ハロルドの差し出したリボンを、ミリスの深緑の瞳がじっと見つめる。これまでのように即却下ではない事に、ハロルドはおや、と目を見張った。

じっとリボンと、ミリスの様子を見守るハロルドとを見比べ、ミリスは小さくため息を吐くと彼の手からその滑らかな手触りのリボンを受け取った。


「……お前のその様子じゃ、何か一つは買わせないとこの店を出ないだろうからな」
「あ。…では、受け取って頂けるんですか?」
「これなら重くもないし、邪魔にはならないだろうから」


そう言って小さく笑う彼女は、少しでもこのリボンを気に入ってくれたのだろうか。

その小さな笑顔にこれ以上ない程に胸を揺さぶられる。


「で、では、何か他のリボンも探して……」
「一つでいいって言ってるだろう」
「え、でも……」


受け取ったリボンを口元まで持ち上げ、ほんの少しだけはにかむ。


「……これでいい」


そう呟く彼女に、ハロルドは……。


「ハロルド? どうした?」


胸を押さえて店の床にしゃがみ込んだハロルドに、ミリスが怪訝な声を出す。

ドクドクと、エルフの遅い心臓が高鳴る。


「あぁ……もう」
「?」


(可愛い……!!)


口に出せば、たとえ店の中であろうとも鞘に入った大剣で殴られかねないので、ハロルドは心の中だけでそう叫ぶ。

床にしゃがんで悶えるハロルドをミリスは非常に胡乱な目で眺めていたが、やがて彼が自力で立ち上がるとリボンを一度彼に返した。


「会計するなら、早く行ってこい。余計な物は買わなくていいから」
「…はい」


素直に頷いたハロルドは、店員を呼んで手早く会計を済ませた。それなりに質の良いリボンのようだが、それでも値段は宝石類の半分にも及ばない。

けれどいいのだ。ミリスが少しでもこれを気に入ってくれているのならば。

会計を済ませたばかりのリボンを再び彼女に手渡すと、彼女はそのまま手櫛で髪を軽く梳いて、側頭部を飾るようにちょこりとリボンを結んだ。


「……よく、似合っていますよ、ミリス」
「…そうか」


ふわっとはにかむミリスに衝動を抑えきれずに抱き付いたお陰で、小柄な体躯に合わない強烈な肘打ちを喰らったこの数瞬後。


けれどこの時だけかと思いきや、明日も明後日もそのまた先もずっと、その髪を飾るリボンを見て、ハロルドは小さいけれど永く続く幸せを得るのだ。















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宝石とかそんな大層なものは要らないけど、プレゼントが嬉しくない訳じゃないし、何より似合うと思うものを持ってきてくれたのは嬉しい。そんなミリスちゃんです(笑)

ハロさんは空回りがちですが、ミリスに愛されてない訳じゃないです。でも意外と本人は愛されてる自覚は薄いんですよね、そんな凸凹カップルww


14/2/27

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