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ロリ戦士さんとロリコンエルフさんの話(仮) 3
喉元に剣を突き付けられられながらも、彼女の瞳を覗き込んでふっと微笑んだ男に、少女は訝しげに表情を歪めた。
「……何だ? 降参ではないのか?」
「いえ、降参です。私の完敗です」
そう言った割に全く悔恨や殺気を始めとした負の感情が見られない笑みに、少女はますます訝しげな顔をする。そんな表情すら、可愛らしいと思った。
彼女に剣を突き付けられたまま、その場にすっと膝を付く。突然目の前に跪いた男に、彼女は最早訳が分からないというように首を振った。
「……私はご覧の通りエルフ族の魔道士、ハロルド=フォーレ。貴女のお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「は?」
不意に跪き名前を名乗った男――ハロルドに、少女は戸惑ったような声をあげた。
主君を前にした臣下のような、貴婦人を前にした騎士のような、恭しい礼に戸惑いながらも、彼女は律儀なのかその口を開いた。
「……ミリス」
「ミリス。……なるほど、貴女に良く似合う可愛らしい名ですね」
「は?」
さらりと口説くような台詞を口にしたハロルドに、少女、ミリスはますます目を丸くした。
そんな彼女の右手……剣を持たぬ方の手を恭しく取り上げ、じっとその戸惑う瞳を見つめる。
「何…?」
「……、私は貴女に完敗しました。貴女の受けた依頼を完遂させる為、此処を出て行かなければなりません」
「……」
そう言うと、彼女はやはり罪悪感なのか後ろめたい表情をその顔に浮かべる。
けれど、ハロルドには今更この土地に未練などなかった。それなりに長くこの場所に根を下ろしてはいたものの、住民たちに理不尽に煙たがれながらも此処に留まる理由など何もない。
研究の成果や知識などは、論文やレポートなどが無くとも頭の中に入っている。何より、魔法の研究よりも遥かに心惹かれる存在が、今目の前にある。
「この土地を離れて何処に行くかは、私の自由ですよね?」
「あ、あぁ……それはそうだが」
「ならばミリス、私は貴女の旅路に付いて行きます」
「はっ!?」
ハロルドの言葉に、澄んだ高い声がまた裏返る。先程から、彼女は戸惑い驚いてばかりだ。そんな反応も、なかなか可愛らしい。
「何故、私の……。寝首でも掻くつもりか?」
「いえ」
ゆらりと揺れる深緑の瞳を見上げ、ハロルドはそっと掴んだ彼女の柔い手の甲に口付けして告げた。
「貴女の強さ、愛らしさに私は心を惹かれたのです、ミリス」
「…………」
その言葉にぽかんとした表情を浮かべたミリスだが、やがて我に返ったのか、じわじわと頬を赤く染め……いつの間にか下ろした大剣の峰(そもそも鞘に入ったままだが)を、ハロルドの鳩尾にゴスッと叩き付けた。
14/1/21
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