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ロリ戦士さんとロリコンエルフさんの話(仮) 2

そんな男に同情を覚えない訳ではなかったが、少女にも生活がある。この見た目からか、盗賊や魔物の討伐依頼などの寧ろ彼女が得意とする仕事はなかなか見つからず、常に生活費はカツカツなのだ。


『――リーエ コル フレイズ……』


そうこうしているうちに男は呪文の詠唱を詠い始め、彼女は鞘に収まったままの大剣を手に駆け出した。


(ッ、速い!!)


その体躯には到底似合わない重量の得物だというのに、彼女の身のこなしのなんと素早い事か。

しかも速いばかりではなくパワーもあるだろうという事は、此処まで傷を負った様子もない事からも想像に容易い。

慌てた男は、此方も負けじと詠唱の速度を上げた。


『――ファイア・アロー!』


ほとんど間を置かず、男の詠唱が完成した。少女が此方へ飛び込んでくる前に、炎の矢が彼女を迎撃する。


「炎の術か。なら運が良かったな」
「えっ? ……えぇぇっ!?」


意味深な少女の呟き。それに疑問を覚えたのも束の間、向かってきた炎の矢に避ける動作も見せず、正面から突っ込んだ少女に思わず声をあげる。

そして驚いた男をさらに驚嘆させるように、少女に向かった炎の矢は全て彼女の右腕……正確にはその手首に着けた古ぼけた腕輪に吸い込まれていった。


「ええぇぇっ!? 何ですかそれっ、何なんですかそれっ!!?」
「……悠長な男だな。私が殺す気で来ているなら、もう死んでいるぞ」


驚きを露わにして思わず動きを止めた男に、呆れたようなため息と共に突き付けられる鞘入りの大剣。

幼い少女一人にあっと言う間に追い詰められた男は、降参だというように両手を上げながら彼女を見下ろした。


「……何者なんですか、貴女は?」
「何者も何も、見ての通りただの貧乏冒険者だ。仕事が無くて、罪も無い魔法使いの討伐依頼を受けなくてはならない程度のな」


ため息を吐いた彼女は、これでも何の非も無い男を此処から追い出す事になる事に罪悪感を覚えているようだった。

憂うような彼女の、深い緑色の瞳を見つめた男は、ぽつりと呟いた。


「……かわいい……」
「…? 何か言ったか?」


小さ過ぎる呟きは、彼女には聞こえなかったらしい。きょとんとする表情は歳相応で、男にはとても可愛らしく映った。

たった一人で男の住居を突破した、まだ年端もいかぬ人間の少女。

基本的に魔法使いの研究所兼住居というものは、要塞に近い造りを備えている。それは主に研究の成果を盗まれない為にであり、侵入者向けの罠を張ったり魔法生物や合成獣(キメラ)などを放し飼いにしたりとその魔法使いによって対策は様々だが、とにかく並みの人間が簡単に侵入出来るような生易しいものではない。

男は実戦での攻撃魔法こそあまり得意とは言えないが、この住居の造りや罠にはそれなりの自信を持っていた。しかし彼女は、それを苦もなく突破してきた。完敗だ。

けれども不思議と悔しいよりも、清々しい。


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あきゅろす。
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