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イレギュラー 7

「……とても、甘い。感情は最高のスパイスだというのは、本当なんだな」
「ん……」


深い陶酔に捕らわれた思考では、吹き込まれた言葉の意味を噛み砕く事が出来ない。

力の入らない指先を必死に動かして、何とか千夜の纏う上着の裾だけを握る。


「…刹那」
「……せん、や…せんぱ……」


睦言のような甘い囁きに応えるように途切れ途切れに声をあげると、耳元に涼やかな笑い声。


「……やはり、霊力が高い分耐性があるんだな。普通の人間なら、この時点で自我などとうに失っている筈だ」
「…そ、なんですか…?」


何処か嬉しそうに笑う千夜に、ゆっくりと重い瞼が上下する。

刹那からすれば手足は重くてほとんど動かないし、意識はすっかり蕩けるように酔っていてとても『自我がある』とは言えない状況であるが。

不思議そうな瞳をする刹那の首筋をまた一舐めし、千夜はクスリと笑う。


「……何をしても反応の乏しい木偶になってしまうより、こっちの方が可愛い」
「ん…っ」


舐め上げていた首筋から少し離れ、千夜は緋色の瞳に熱を灯したまま刹那の頬を優しく撫でる。

刹那の黒珠の瞳は潤んで甘く溶け、うっとりとしたように、けれど奥底の意思は失わないままに千夜を見上げていた。

愛おしいと感じていた後輩の理想の反応に、千夜の吸血鬼としての本能は滾々と湧き上がる。


「もっと……もっと欲しくなる、刹那」
「あ、ぅぁ……!」


薄い肌を、また浅く破って。

相手にすっかり陶酔しているのは、果たしてどちらなのだろうか。

刹那は蕩けたようにぼーっとする頭の中、必死に縋ろうと今度はゆるゆると彼の背に腕を回した。

縋るように抱き付いてきた刹那に、千夜は嬉しそうに喉を鳴らした。


「かわいい、刹那」
「んっ……」


首筋を吸い上げる感触。クラリと頭の芯が痺れた。

どのくらいの間、彼は刹那の血を貪っていたのだろうか。

金縛りに近かった最初の感覚とは違い、すっかり陶酔によって四肢の力を奪われた刹那は、千夜の唇が首元から離れるとくったりと彼の肩口に頭をもたれさせた。


「刹那?」
「ん……」


名前を呼ぶ声に、まともに応える気力は無い。

ゆるゆると頭を振って彼の首元に額を擦り寄せると、甘くため息を吐いた。


「…刹那、」


千夜の声色がまた変化した事に気付いても、上手く反応を返す事が出来ない。

力の抜けた刹那の躰は簡単に持ち上げられ、近くにあったソファーへと転がされた。


「……? 千夜、せんぱい?」
「…刹那」


見下ろす緋色の瞳の奥には、先程刹那を貪ったからかやや色の薄まった餓えと渇き。

そしてもう一つ、先程は無かった強い光。


――熱い熱い、欲情












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「感情は〜」っていうのは吸血鬼の間での言葉です。愛してる相手の血が一番美味しいよ、って意味ですww

吸血鬼の吸血時の金縛り効果はかなり強力です。しかも千夜のそれはクォーターながら平均より高い方。

ちなみに待宵草の星那が金縛り平気なのは、同じ(ハーフだけど)魔族だからです。耐性がある、って事ですね。同じく空瀬側にも星那のフェロモンが一部効いてないところがあります。実は星那のフェロモンも凶悪性能を誇ります(笑)

イレギュラー書いてた筈なのに、待宵草の隠れ設定が次々決まっていく不思議ww


12/12/11

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あきゅろす。
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