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パレード 2

「またキツネ蕎麦か、好きだなー」
「おう、やっぱ俺はお揚げが一番好きだね」


学園に居ると、週三以上の率で食べるからな。

からからと笑う物部に頷き、腰でまた自己主張を始めた筒を左手でつついてから割り箸を割った。

俺の中でのベストオブ油揚げさんは、実家のひぃばあさまの作るものだが、この学園の食堂のものはそれに次いで第二位に位置する美味しさだ。


「いただきます」


箸を付ける前に、しっかりと手を合わせる。食材を作った人に、料理を作った人に、そして食材と実りに感謝する事は大切だ。

実は昨夜も実家でひぃばあさまの稲荷寿司を食べてきた訳なんだが、それはそれ。一週間振りとなる学園の油揚げに舌鼓を打つ。


「……ナギはホント美味そうに食うなぁ」
「食べ物は美味しく頂くのが、一番の感謝だぞ」
「ふぅん」


俺の言葉に物部は分かったような分からないような声をあげ首を傾げ、運ばれてきたカツ丼を前に手を合わせた。


「…いただきます」
「ん」


なんだかんだ、こいつもしっかりと食事の挨拶は口にする。感謝の言葉を忘れがちな現代、形だけだとしてもそれを忘れず口に出来るという事は良い事だと思う。

満足げに頷きながら俺が出し汁のたっぷり染みたお揚げさんを囓っていると、ポケットに入れていた携帯電話がぶるぶると震えた。


「?」


箸を片手に携帯を引っ張り出しディスプレイに視線を走らせると、新着メールが一件。誰だ?


「どした?」
「……」


――――――――――――

From:クロウさん
Title:おかえり

今月入って、10回目のキツネ蕎麦

たまには動物性タンパク質も食え。だからちいせえんだぞ、マツリ

――――――――――――


――何処から見てんだ!? あの人!


「ナギー?」


メールの文面からガバッと顔を上げ、物部の不審げな声にも構わず俺は食堂内を見回した。

そして、二階席から此方を見下ろす鮮やかな金髪を、見付ける。

一瞬だけ目が合い、すぐに向こうから外された視線。表向きにも学園内で大変目立つ役職に就いている彼は、学園の目立つ所で直接接触してくる事はない。

代わりにこんな、ストーカー染味たメールを送ってくる事は多々あるが。

俺は再び携帯を開き、件名に『ただいま』、本文に『クロウさんのストーカー』とだけ打って返信する。

二階席で携帯を開いた彼がクスクスと笑っている姿を確認しながら、俺はさっさと食事へ戻った。せっかくの蕎麦が伸びてしまう。


12/12/29

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