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アンチ王道な脇役と変な人 2

「三年特進、花城未虎様……花城会長の双子のお兄さん…?」


その声に、ざわざわとざわめき出すギャラリーたち。段上の美形たちは、会長の龍成を除いて未だ信じられないという顔をしたままだが。

生徒会長を務める花城龍成に特進科所属の双子の兄が居るという話は、一般生徒の間でも広く知られている。…が、その名前も知られている筈の“双子の兄”を、実際学内で目撃する事がほとんど無く、半ば都市伝説に近い存在かと思われていたのに。

この場の生徒の思考を残らずジャックしている事など知らず、特進科の中でも飛び抜けて頭が良いと言われている花城未虎は、にこにこと爽やかに笑いながら腕に抱えた少年を抱え直して段上の弟を見上げた。


「以前は7日に一度は私の部屋を訪れていたのに、最近は全く来ないのだから心配していたよ。先の訪問から今まで、34日4時間23分と10秒の間、一体何をしていたんだい?」
「え、あぁ、色々と忙しくてな……ってそうじゃない未虎! 引きこもりのお前が、何でこんな所に居るんだよ!?」


どこまでもマイペースな兄に習慣でいつも通りに返しかけ、けれど今は彼のペースに巻き込まれている場合ではないと首を振って叫ぶ龍成。

…34日4時間以下略、つまりは一ヶ月程前にあった事といえば、この場において不気味な程静かな転校生が転入してきた事だろう。

変わり種の(その実、他人を顧みず自分の事しか考えられないただの迷惑な子供であった)転校生に惹かれ一度自らの職務を放棄しかけた美形集団の中で、一番最初に我に返った龍成は、それからは周囲のフォローに奔走していた。その努力のお陰で、学園内部はそれ程傾かずに済んだのだ。

…そんな学内では皆が知っている事情すら、自らの研究室に引きこもっていた未虎にとっては知らぬ話だ。


「あぁ、今日は恥ずかしながら薬品の調合に失敗してしまってね、少々毒性の強いガスが私の研究室に充満してしまったのさ。空気に混ざってしまえば大した事はないのだが、換気をしている間は部屋が使えないからね、いい機会だからこうして久し振りに学内を散策していたのだよ。
…いや、たまには外を出歩くべきだね。お陰で私は、空から少年が落ちてくるだなんて、こんな運命的でファンタスティックな体験が出来たのだから」


やや早口に、珍しく興奮した様子(これは龍成にしか分からないが)で言い切った未虎は、腕に抱えた、未だ呆然としていた少年に微笑みかける。

(中身は完全に変人ではあるが)絶世の美貌と称していい未虎に至近距離で微笑みかけられ、巻き込まれ体質な不運少年――鹿嶋(かしま)空は、訳も分からず顔を赤く染めた。












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未虎さんは早口にがーっとまくし立てるように喋る為、慣れていない人はただポカーンとしてしまう事が多いです(笑) 慣れてる龍成は半ば聞き流してます ←

それにしても双子の独壇場過ぎて、受け子の空気感がぱねぇ…! ←



12/2/23

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