Dolce 2
「…月代、俺はデザートを作りたいんだけど…」
「あぁ」
「だったらちょっと離して……っ!」
一際強く、紅い花片を散らすつもりでまた項に口付け。
敏感な雪羽の肩が震えたのに、低く喉を鳴らして月代は笑う。
「デザートに雪羽が欲しい」
「っ、俺はデザートじゃないっ…てば」
「…そうだな」
後ろから腕を伸ばして混ぜかけのボウルを遠ざけ、背中から抱き締めていた躰を己の方へ向け半回転させる。
快楽に引きずられかけた玻璃色の瞳が、うっすらと水膜を張らせて月代を見上げた。
「俺にとっては、メインデッシュも勝る」
「ひゃっ……!」
露わになった首筋に戯れのように甘く歯を立てると、驚いたのか上擦った声が雪羽からあがる。
月代がすっかりその気になっている事を察したのだろう、もぞもぞと身を捩って小さく抵抗しようとする姿が愛らしい。
「ちょっ、月代…! まだ昼間だし、此処キッチンだし…!」
「別に誰が咎める訳でもない、問題はないだろう」
「そういう問題じゃっ……やっ」
ごねる雪羽の躰を軽く抑え込み、部屋着のシャツの裾から手を差し入れる。
滑らかな背を悪戯に弄ると、抱き締めた躰が小さく震えた。
「月代…」
「…雪羽、」
俺だけの、可愛い雪羽。
ほんのりと朱に染まる耳元にそう囁きかけると、澄んだ玻璃の瞳が大きく見開かれる。
「……お前を食べたい」
「うぅ……」
狡い、と小さく呟く声。
月代からしてみればそんな些細な仕草すら自分を煽動して止まない雪羽の方が、よっぽど狡くていじらしい。
細やかな抵抗は止み、俯いた雪羽がキュッと月代の上着の裾を握り返す。
「……此処じゃなきゃ、ダメなの?」
どうやらベッドに移動したいらしいが、本当にそうして欲しいのならばこんな風に月代を煽る仕草は控えるべきだと思う。
移動するだけの余裕など元よりあったか怪しいが、今ので完全に理性は焼き切れた。
相手の背に回した腕で腰を引き寄せ、より密着を強める。
距離を詰めた肌から、伝わる心音。ゆるりと瞬き、見開かれる玻璃色。
「…そうだな。雪羽があまりに可愛いから、我慢が効かない」
「…!」
元より我慢するつもりなど、毛頭ないが。
瞳を見張る可愛らしい雪羽の顎を優しく指先で上向かせ、ほんのりと色付いた頬の上に軽く口付けを落とす。
「ん…、月代……? ……あっ」
そして羽根のような軽い口付けの感触に、雪羽が戸惑ったような、僅かに物足りないような表情を浮かべた瞬間に、唇の上へ。
驚いたように躰を震わせた雪羽も、緋い花片を割るようにその唇を押し開き奥へと舌を差し入れれば、応えるように舌を絡めてくる。
なんだかんだと快楽に従順で…、月代に甘いところも、何とも可愛らしく愛おしい。
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