夜間遊泳
※ 恋人設定
ふっとぬるま湯をたゆたうような意識を浮上させたのは、慣れた体温の中。
微睡みと覚醒の境、雪羽はゆるりと緩慢に扇のような睫毛を上下させた。
「…ん…」
視界は墨に塗り潰されたよう。…それは相手の胸に顔を埋めているから、などという理由では勿論なく、時刻が未だ夜半であるからだろうという事を鈍い思考回路で導き出した。
「……いま、なんじ…?」
寝惚けながら雪羽はもそもそと身じろぎし、枕元に置いていた携帯電話を手にした。
サイドキーを押してディスプレイに表示された数字を確認すれば、時刻はAM3:09とあった。夜明けにはまだ遠い。
(……てか、そもそも寝たの何時だったし…)
この躰が気怠く重たい理由は、月代が雪羽の躰を抱き締めて離さないのは、つまりそういう事。
今日の場合は月代にしては若干軽く、行為を済ませていたとは思うけれど。ただそれでも、日付は越していたとは思う。
酷使された躰と睡眠時間を思えば、すぐにでもまたベッドに躰を沈めるのが得策かもしれない。しかし、雪羽はもう頭が冴えてきてしまっていた。
緩く頭を振る。雪羽がはぁと息を漏らすのと、頭上ですぅと安らかな息を吸う声はほぼ同時。
雪羽が顔を上げると、暗所に段々慣れてきた薄闇の視界の中、すやすやと寝息を立てる珍しい様子の月代の顔があった。
…最近はほぼ毎夜寝所を共にしているというのに、雪羽は穏やかに月代の寝顔を眺めた記憶、というのはあまりない。
それは雪羽自身あまり寝起きが良い方ではないのと、それからいつも寝る前に体力を消耗させられているのが原因だろう。躰にかかる負担は、雪羽の方が重い。
ただ、今日は月代が若干の手加減をしてくれたようで、雪羽の体力にも余力があったのかもしれない。だからこそ、中途半端な時間に目が覚めたのか。
(……いい機会だから、月代の寝顔眺めてやろっかな……)
一緒に生活していても、あまり見られない景色。
その馴染みの腕の中で身じろぎ、雪羽は彼の寝顔を存分に見上げた。
普段は大人びた、整った面立ちは、瞼を閉じれば幾分幼く、年相応に安らかだ。
「……かわいい」
ほとんど吐息だけの声で、そう呟く。
彼が起きている間に囁いたらどうなってしまうか分からない台詞も、寝顔を前にならいくらでも言える。
愛しい腕の中、雪羽はくすくすと小さく笑って月代を見上げる。
「ん、雪羽…」
「え? ……、寝言?」
「ん…」
名前を呼ばれたから目が醒めたのかと思えば、これまた彼にしては珍しく曖昧な声で音を吐いて雪羽を抱く腕に力を込めた。
抱き寄せられた雪羽は、薄闇の中小さく笑い呟く。
「…ふふ、おやすみなさい」
寝息をたてる顎に、そっと触れるだけの口付けを贈って。
再び睡魔が訪れるまで、雪羽は愛しい相手の寝顔を見つめていた。
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雪羽サイドで何かやりたかった。…若干ぐだぐだな感じですね(^^;)
攻めが受けの寝顔を眺めてるのも美味しいけど、逆もアリじゃない!(笑) 無防備な攻めにきゅんとくればいいよww
11/3/23
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