[携帯モード] [URL送信]
等価を捧げる 4

「じゃあ今度は、詩織が自分で脱いで」
「えっ……」


普段はソールが詩織の服を脱がせるから、詩織自らが彼の前で脱いでみせる事はない。

ソールに肌を見られる事自体は初めてではないとはいえ、このように自分から肌を晒す行為は…やはり恥ずかしいらしかった。

そんな詩織の恥じらいこそをソールは求めている訳で、目の前で上機嫌で笑う彼を見て詩織はそれを理解したようだ。

しばし迷うように視線を揺らした詩織だったが、軽く唇を噛んで自らのシャツに手をかけた。


「…っ」


釦をひとつひとつ外す。そんな簡単な仕草さえたどたどしくなってしまうのは、じっと注がれる碧い視線のせいだ。

次第に露わになる肌。パサリと落ちる、布の軽い音。

震えて縮こまろうとした躰を、ソールはグイッと引き寄せた。


「あ……」
「…綺麗だよ、詩織」
「…!」


羞恥に震えている詩織にそうとびきりに甘く囁くと、彼は胡桃色の瞳を零れそうな程に見開いてソールを見返した。

その時の自分はきっと、酷く雄くさい表情をしていた筈だ。真っ赤になった詩織が二、三、言葉を探すように唇を戦慄かせる。


「……っ、やだ……」


結局上手い言葉が見つけられなかったのか、照れ隠しに零れたのはそんな拙い一言。

震えるその声が更に可愛らしくて、ソールはクツクツと喉を鳴らして笑った。


「…嫌なの? せっかく詩織の方から頑張ってくれるって言ったのに」
「そ、うじゃなくて……。分かってる、くせに」


動揺しているのか、ゆらゆらと視線が揺れる詩織の瞳を覗き込む。

近くで見ると透き通るような色をした虹彩が、意地悪く笑うソールを映していた。実に愉しげな自分に、更に笑ってしまう。


「……わざと、僕を恥ずかしがらせる事ばかり言ってる」
「うん。恥ずかしがる詩織は可愛いからね」
「…だから、そういうことは…」
「本心だよ」


本当に十も歳上だとは信じられない程初で、可愛くて可愛くて仕方がない人。

こんなに愛しい人が、恥じらいながらも自分の為に『頑張ってくれる』というのだから、今日は本当に良い日だ。


「ひゃっ!?」


林檎のように赤い頬に軽く口付けしてから、かぷりと軽く歯を立てて甘噛み。

更に真っ赤に熟した果実に、ソールは瞳を細めた。揺れた視線を逃がさぬように、その頬を指で触れて捕らえる。


「…さて、次は何を頑張ってくれるのかな? 詩織」


組み敷いた躰を見下ろして、ソールは甘く笑った。


≪  ≫

6/8ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!