しあわせな朝
雪羽の朝は、恋人の腕の中から始まる。
「ん……」
「おはよう、雪羽」
「…おはよ、月代」
雪羽も寝起きはそう悪くない方なのだが、朝起きるのは大抵月代の方が早い。彼は目覚まし時計などがなくても、決まった時間になれば目が覚めるタイプらしい。
そんな彼は雪羽より先に起きても先にベッドを出る事は滅多になく、いつもまだ眠っている雪羽の寝顔を眺めている。
瞼を開けたと共に降ってくる優しい声と口付けに、寝惚け眼の雪羽はゆるりと頭を振った。
「…ん、今何時?」
「まだ6時を過ぎたところだが、もう起きるか?」
「うん。朝ご飯、作らなきゃ」
今日が休日だったならば二度寝の一つも決め込むところだが、生憎と今日は平日だ。あと半刻もすれば、普通に学校に行かなければならない。
月代の腕の中から半身を起こして、雪羽はふぁ、と欠伸を噛み殺した。
その間にまた額に口付けを落としてくる恋人の頬に応えるように口付けを返し、雪羽は立ち上がる。
「朝ご飯、何かリクエストある?」
「…そうだな、今日はトーストと目玉焼きの気分だ」
「ん、分かった」
月代の答えに頷き、寝室を出る。
顔を洗って、歯を磨いて。軽く身支度を整えてから、キッチンへ立つ。
雪羽が朝食を作っている間に月代も身支度を整え、制服に着替えてから出て来る。
「月代、コーヒーは自分で淹れて」
「あぁ」
キッチンから、声。小さく笑った月代は頷くと、せっせと朝食の用意をする雪羽の働くキッチンへ入る。
目玉焼きを焼く雪羽の邪魔にならないように湯を沸かし、ドリップタイプのコーヒーを二人分淹れる。月代はあまり料理はしないが、飲み物全般を淹れるのは大分手慣れてきたように思う。
トーストと目玉焼きを焼く傍ら、冷蔵庫の中にあったレタスを千切って簡素なサラダを作った雪羽は、マグカップをダイニングに置いて戻ってきた月代にサラダボウルを二つ渡す。
月代がそれを運ぶ為に再びキッチンとダイニングを往復している間に、目玉焼きを皿に盛りついでに横で炒めたソーセージも載せる。
「これもお願い」
「あぁ」
最後のトーストはバターと共に雪羽がダイニングへ運び、月代と共に朝食をテーブルの上に並べた。
ちなみに雪羽は目玉焼きには醤油派で、月代は塩胡椒派である。それぞれ調味料を黄身の上に振ると、向かいに座った相手と視線を合わせた。
「いただきます」
「いただきます」
玻璃色は少し悪戯っぽく笑って、夜色は穏やかに微笑む。
「…美味しい」
「目玉焼きに、美味しいも美味しくないもないだろ」
「雪羽の顔を見ながら食べるから、美味しい」
「……ばーか」
恋人と向かい合って朝食を食べる朝。
それはいつもの光景ではあるけれど、とてもしあわせな朝だ。
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夫婦の朝のお話。バカップルめ! 一生爆発してろ!!(笑)
13/6/25
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