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等価を捧げる 2

「ぼ、僕からも何か出来るように頑張るから……あ、飽きたり、しないで……」
「…は?」


飽きる。一体何に飽きるというのか。詩織に? 有り得ない。

などと反射的にソールは思うが、うるうると潤む胡桃色の瞳を前に口を噤んだ。あまりにもその様子が可愛らしかった為だ。

言葉の代わりに優しく彼の頬を撫で、ソールはにっこりと微笑む。


「うん。何を頑張ってくれるの?」
「あ、えっと……ん、と」


ニコニコと訊き返すソールに、詩織が戸惑ったように視線を揺らす。


「……、僕からも、ソール君に喜んでもらえるような事……とか」
「例えば?」


曖昧にぼかした言葉を、間髪入れずに訊き返す。意地が悪いという自覚はあるが、詩織が可愛いのがいけない。

ぐいぐいと訊き返された詩織は少し怯んだようだが、潤んだ瞳でソールを見つめ返す。


「僕から、キスしたり、とか……」


そう言った詩織はソールの頭を抱え込むように引き寄せ、言った通りに彼の方から唇を寄せる。

ちゅ、と軽く触れるだけで離れるバードキス。詩織にしては頑張っているのは分かるが、せっかくだからもう少し要求してみたい。


「…もっと」
「……ん」


甘える声で囁くと、頷いた詩織がまたソールを引き寄せた。

はむ、と柔らかく唇を啄まれる。ソールは唇を薄く開けて、更に深い口付けを誘ってみせるが、いっぱいいっぱいらしい詩織はその意図までは汲み取れていないようだ。

繰り返し角度を変える啄みの合間、ソールはクスリと笑いを漏らす。


「んっ…、ソール君?」
「……舌は、入れてくれないの?」
「ふ、ぇっ」


仕方ないので、言葉にして誘ってみる。

薄く開いた唇から覗く白い歯と、紅い舌。露骨に誘ってみせるその仕草を見て、詩織はギクリと肩を揺らす。

朱く染まる頬。けれど「頑張る」と宣言した詩織は、ソールの要求を断る事は出来なくて。


「んっ……」


恥ずかしいからか、ギュッと閉じた瞼。薄く開けた唇の隙間から、おずおずと柔らかい舌が差し入れられる。

不慣れな侵入者を甘く迎え入れ、ソールは伸ばされた舌先を絡め取るように奥へと導いた。ピク、と組み敷いた肩が揺れる。


「は…ぅ、ん」
「……ふっ」


もぞもぞと身じろぐ躰を組み敷いて、精一杯の様子で舌を差し出す詩織を味わう。

すっかり主導権を奪い取ったキスを愉しみながら、無防備な服の裾から湯上がりの熱が僅かに残った肌を撫で上げた。


「ふ、あ…!」
「……嬉しいな」
「…え?」


束の間離した口付けの合間、ソールはにっこりと笑みを深める。


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