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あふれるあいを

いつの間にか月代の仕事部屋と化した書斎ではなく、リビングのソファーに座ってノートパソコンを開いている月代の膝の上を、跨ぐようにして座る。

それなりの体格差があるとはいえ平均的な男子高校生一人分の体重を支え、かつ片腕をその腰に回したまま平然とした表情で仕事を続ける月代には、いつもながら恐れ入る。腰に回った片腕がそのままパソコンのキーボードを叩いている為、必然に彼に密着する姿勢になっている雪羽ははぁ、とため息を吐いた。

書斎には行かず此処で仕事をしているという事は、今日しているのは機密性が低い仕事という事になる。だからと言って別に雪羽は画面をじろじろと覗き見たりはしないが、代わりに淡々と仕事こなす月代の端正な顔をじっと見上げた。


「……」


深い夜を宿したような、黒色の瞳。月代はいつも雪羽の瞳を綺麗だと言うが、雪羽にとっては月代のその夜色の瞳の方が綺麗に見えた。

そう、月代が雪羽の瞳を眺めるのを気に入っているのと同じように、雪羽も彼の瞳を見つめる事が気に入っているのだ。

パソコンの画面に注がれた視線とは絡み合う事はないけれど、暇を持て余した雪羽はただその夜色を眺める事だけに時間を費やした。

触れもせず、言葉も交わさず、ただじっと眺めるだけ。端からみれば退屈とも思える『たったそれだけ』にいくらでも自分の時間をつぎ込めるのは、紛れもない『好き』の証だと雪羽は思う。

だからこそ、雪羽は月代に自らの“瞳”を捧げる時間も好きだ。あの時も今と同じように月代が雪羽の瞳をただただ眺めているだけなのだが、それが雪羽にとっては何よりも幸福なひと時となっているのだからおかしなものだ。

ふ、と無意識に唇から漏れた笑い声。液晶画面に向けられていた夜色の視線が、不意に此方を振り向いた。


「…何?」
「…いや。今何か笑ったか? 雪羽」
「え? あ、ちょっと何か…可笑しく、なって。ごめんな、仕事の邪魔して」
「いや、それは構わない。元々急ぎではない仕事だ」


首を振った月代は、軽く腰を捻って膝の上に乗った雪羽の背を抱き寄せた。元々片腕は回っていたので距離は近かったのだが、それが更に密着する事になる。


「……それで? どうしたんだ?」
「んー……」


淡々と仕事をこなしていた夜色は、今は柔らかい笑みを浮かべていて。

戯れるように訊かれた問いに、雪羽は曖昧に微笑んで答えを濁した。

本当に、何でもないのだ。

ただ、そんな何でもない事が堪らなく幸福で……彼の事が改めて好きだな、なんて実感していただけ。そんな事、気恥ずかしくて本人を前に言える筈がない。

ゆるゆると首を振った雪羽は、軽く背を伸ばして彼の、その高い鼻梁の先にちゅっと軽い口付けを落とした。

唇にしなかったのは、まだ気恥ずかしさが胸の中に居残っていたから。

ぱちりと瞳を瞬かせる月代の少し珍しい表情に今度ははっきりと声をあげて笑うと、仕返しと言わんばかりに小さな鼻のてっぺんを甘噛みされた。


瞳を細めて笑みを形づくる、その夜色が、愛しい。















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鼻の頭にちゅ、ってかわいいよね! といういちゃいちゃ月雪話(笑) 会話がエラい少ないですね、なんかひたすらいちゃいちゃしてますね!ww

何気に久しぶりな月雪話が、こんな意味のないいちゃいちゃですみません、いやいちゃいちゃは月雪の通常運転でしたね。なら仕方ない。

13/5/5

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あきゅろす。
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