Dolce 8 ※
「……つきしろ、」
「ん…?」
「…すき。だいすき」
口付けの合間、甘えるように溶けた声で囁かれる睦言にくらりと目眩がした。
普段恥ずかしがり屋のこの恋人は、同時に筋金入りの甘えたがりでもある。
どうすれば月代が甘やかしてくれるのか、どんな言動で理性が削れるのか。案外雪羽はそれを知り尽くしていて、こうして甘えてくるように思える。
何にせよ、今の一言は月代の理性を削り取るには充分過ぎる威力を持っていた。
「…雪羽」
「ん……?」
深い口付けですっかり蕩けた玻璃色の瞳が、とろりと月代を見上げる。
一度離した唇でその瞼の際に触れると、思ったよりも切羽詰まった声が出た。
「……動くぞ…っ」
「ぁ、ひぁぁっ……!」
雪羽の躰奥深くまで埋めた熱が馴染みきるその前に、腰を引いてその奥を擦り上げた。
月代が拓いた、自分だけが知る恋人のカラダ。まだ熱が馴染むには早いかと思ったが、其処は煽った雪羽が悪い。甘んじて受けて貰おう。
「いっ、ぁぁ……」
まだ痛みを感じているのか、つらそうに歪む表情に軽く口付けると、やや性急だった動きを緩める。乱れた吐息と嬌声を耳元で聞きながら、月代は雪羽の場所を探った。
「ひぁぁっ……!!」
探りなれた場所に触れると、雪羽の声の艶が明らかに変わった。
気持ちがいいのか、月代の肩に回った腕に力が籠もり、背中に少し伸びた爪が立てられる。
こうして雪羽の方からの“痕”を付けられるのも嫌いではないが、後で爪は切ってやろう。そんな事を片隅に考え、月代は雪羽の奥を攻め立て続けた。
「あっ、あ…んっ…! ひぁぁっ!!」
「雪羽……」
「ん、っ……月代っ……」
繰り返し雪羽の弱い場所ばかり擦り上げると、受け入れる為の器官と化した其処はきゅうきゅうと月代の熱を締め上げる。
触れる度に熟れ、甘く溶けていく躰。薄く濡れた玻璃の瞳。
月代を求めながら甘く掠れる嬌声に、月代はゆっくりと唇を吊り上げた。
「…雪羽」
「あっ、や…あっ…!」
「…可愛い、雪羽…」
自分だけの可愛い恋人。どんな甘味よりも甘く蕩けるその口付けに、酔いしれる。
甘い声で囁きながらもナカを穿つ動きは止めない月代は、震える声と奥に恋人の限界が近い事を察する。
張り詰めた雪羽の熱に指を絡ませながら、解放を抑えるように根元を強く押さえ付けた。
「……まだだ、雪羽」
「あっ!! や、やだ…っ、月代…っ」
絶頂をせき止められたからか、大きく見開かれた玻璃の瞳の縁から、ぽろりと水晶の欠片のように涙が零れ落ちる。
その雫を舌で拭い、月代は瞳を細めた。
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