あたたかい朝 ※ 本編「自然な不自然」と「近くの遠く」の間に入る辺りの時間軸。雪羽にめろめろな月代視点。 腕の中の温もりの身じろぎに、ゆっくりと意識が浮上する。 目を開ければ、さらりとした黒髪に安らかな寝顔。 狭いベッドの中、俺の胸にぴったりと躰を預け、雪羽はすやすやと寝息をたてていた。 「…ん…」 かく言う俺もまだ完全には目が醒めきっていない状態で、ぼんやりと目の前の小さな旋毛を見下ろす。 すぅ、すぅ、と寝息に合わせうっすら上下する胸の感覚が、密着させた肌越しに伝わった。 …そう言えば、昨夜は着替えさせるのが面倒で、互いに衣服を纏わないまま床に入ったんだったな。 二人の躰に掛けたシーツの端から、雪羽の白い肩が覗いている。首筋に近い位置に点々と浮かんでいる紅は、俺が付けた所有の印だ。 「…ふっ」 自然と唇に笑みを上らせ、俺はそっとその無防備な肩に吸い付いた。 また一つ、白い肌に映える緋色の花が咲く。 腕の中の躰を閉じ込めるように抱き締め直すと、雪羽の細い躰がもそもそと身じろいだ。 「ん…ぅ」 小さく息を漏らすが、まだ完全に覚醒する気配はない。 無意識に俺の腕の中で居心地が良い場所を探し、すりすりと頬を擦り寄せる仕草が可愛く、俺はまた唇を釣り上げた。 …寝惚けている雪羽は、非常に可愛い。 俺が気に入っているその玻璃の瞳こそ閉じられているが、寝顔は無防備で可愛らしく、何より寝惚けて俺に存分に甘えてくる様子が堪らない。 きゅっと俺の腕を握る雪羽の肌のあちこちに唇を落としていたら、彼の特別長くはないが案外ボリュームがある睫毛が微かに震えた。 目覚めの兆候か。昨夜も意識を飛ばすほど激しく愛したというのに、この細い躰は案外タフだと思う。 今日は休日だから、もう少しゆっくり眠っていてもいいのに。 もっとゆっくりと可愛い雪羽の寝顔を堪能していたかった俺は小さく息を吐いたが、まぁ彼が目覚めたら目覚めたでまた可愛らしい姿が見られるからよしとしよう。 「んっ……つきしろ…?」 ぴくりと睫毛が震え、まだ眠たげな、朝露を垂らしたように潤んだ玻璃色がゆっくりと姿を見せる。 舌足らずなその声は昨夜の名残か微かに掠れていて、自分の中でくすぶっていた熱が僅かに上昇したのを感じた。 覚醒しきらない雪羽は、ぼんやりとした瞳で俺を見上げる。 その潤んだ色に瞳を細めた俺は、そっとその頬を片手で包みながら囁く。 「…まだ寝てていいぞ」 「ん……でも…」 頬の下や耳の後ろを指で撫でると、雪羽はくすぐったげにその透き通った玻璃を細めて俺を見つめた。 雪羽の甘えるようなこのふわりとした空気は、事後の極僅かな時間と寝惚けているこの時のみのもの。 甘える事が大好きなくせ、素直に甘えてくるのは意識が緩んでいる時だけという雪羽。 そんな彼が、いつでも素直に俺に甘える姿が見たいな、などと思いながら、俺は寝惚けた雪羽に口付けを贈った。 俺だけに、甘えればいい -------------------- 発作的に書いた番外編。ようは雪羽にめろめろです(笑) こんなに溺愛っぷりが分かりやすい男なのに、愛されている自覚の薄い雪羽はホントニブちゃんですねw それが彼の可愛いトコロですがww 結局月代は、雪羽なら何でも可愛いんだと思いますよ、この変態め!(爆) 11/2/9 ≫ [戻る] |