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ねこゆきはと月代 A

『猫』というのは、あくまでも愛玩動物だ。

言わば“可愛いのが仕事”であるし、元の気質の自由さ気まぐれさからも、自ら進んで他の仕事をこなすような個体は少ない。

だから月代が愛して止まぬ愛猫、雪羽の場合は、『猫』の中でも少数派に入るだろう。


「…おかえり、月代」
「あぁ、ただいま」


ひょこりとキッチンから顔を覗かせ、ぴくぴくと灰色の三角耳を震わせて主人の帰りを出迎えた雪羽を、月代は腕の中へ呼び寄せる。

柔らかい髪に触れ、頬に触れ、震える耳に指を滑らせると、雪羽の小さな躰がピクリと震えた。

敏感な耳への刺激をふるりと頭を振って散らし、雪羽はじっとその玻璃色の瞳で月代を見上げる。


「ご飯出来てるよ、それとも先にお風呂入る?」


まるで新婚のようなその台詞は、どこで覚えてきたのか、月代が仕込んだ訳ではなく雪羽が自ら言うようになったものだ。

可愛いので敢えて指摘はせず、月代は雪羽の頭を撫でた。


「先に夕飯にしよう」
「うん。じゃあ準備するから、月代は手洗ってきて」


そう言ってぱたぱたとキッチンに入って行く月代の『猫』は、本当によく働く子だ。

炊事や掃除、洗濯などの家事を、雪羽は進んでせっせとこなす。…その理由はおそらく、愛玩動物として“愛でられる事”に十全の自信がない為だろう。

パッと見華やかとは言えない容姿と灰色の毛並みは、こと見た目が重要視される『猫』の中では劣等のレッテルを貼られていたという。

愛玩動物の役目を100%果たしているという自信が持てないから、本来『猫』が好まない水仕事の類でも進んでこなす。…何ともいじらしく、もどかしくて愛らしい事だ。

他人が雪羽をどう評価しようが、月代にとって雪羽は愛して止まない可愛い『猫』。…寂しがりで人一倍の劣等感を抱える雪羽は、それをどこまで理解しているのか。


「月代?」


洗面所から出た所で立ち止まっている月代を、夕食をテーブルに並べ終えた雪羽が不思議そうに見やる。

透き通った硝子玉のようなその瞳に見つめられ、月代は小さく唇を歪ませた。


「雪羽」
「?」
「おいで」
「…? うん」


呼べばすぐに月代の腕の中に収まる、己だけの可愛い『猫』。

ふかふかとした耳に触れ、柔らかな唇に深く口付けを施せば、快楽に馴れた躰は容易く蕩けていく。


「……、夕飯の前に、雪羽を食べたい」
「えっ…、あっ、にゃ……」


最愛の躰を押し開きながら、月代は密かに息を吐いた。


(……いつになったらお前は、俺以外を忘れるんだろうな)


その玻璃の瞳の映した自分以外の全てを、消し去ってしまいたい。















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ねこゆきはと月代。なんでこんなに薄暗くてヤンデレなんだ…! …と思ったものの、ジプ本編でも月代は本来こんなカンジだった(笑) 雪羽視点が主だから出てこないってだけで、実際は溺愛とヤンデレ全開なんだよ!w ←

『猫』は元々薄暗くてドロドロした環境から生まれてるので、ねこゆきはがネガティブなのはある意味仕方ないのです。小さい頃に高雅に拾われたねこみやこの方が、『猫』としては異端だったりします。


12/7/3〜8/8(拍手掲載)

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