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雪の日

「…あ、雪降ってきてる」


ふと窓の外を見上げた雪羽が呟き、リビングのソファーで軽く書類整理をしていた月代は顔を上げた。

山の天気は変わりやすい。いつの間にか降ってきていたのか、窓の外はすっかり白に染められていた。この様子なら、明朝にはすっかり積もっているだろう。

実家の方ならばともかく、山の中にあるこの惣院においては降雪はそう珍しい事でもない。月代は再び書類に視線を落とそうとしたが、雪羽がぼんやりと窓辺に立っているのを見て口を開いた。


「雪羽?」
「…積もるかな?」
「この調子なら、積もるだろうな。…明日何かあるのか?」
「ううん。特に何もないけど…」


ゆるりと首を振った雪羽は、カラ、と窓を開けた。

冷気を帯びた風が室内に吹き込むのも構わず、雪羽は宙に向かって手を伸ばす。手のひらに乗ってすぐ、雪の粒は体温によって溶ける。


「雪羽、風邪を引くぞ」
「……うん」


微かに眉を寄せた月代の言葉に気のない頷きを一つ返し、雪羽は窓辺に積もった雪を集め始めた。

聞く耳を持たない雪羽の様子に、月代は小さくため息を吐いた。手にした書類を起き、立ち上がる。

玄関の近くに置いてあったマフラーを取り、雪羽の背後からそれをふわりと巻き付ける。


「雪遊びをするならせめて、温かくしてからにしろ」
「あ、…ありがとう」


ぱちりと瞳を瞬かせ振り向いた雪羽はやはり寒いのか、頬と鼻の頭が赤い。

両手でその冷えた両頬をぺたりと覆って温めようとすると、動きづらいからか雪羽が身をよじった。


「月代も、此処にいるなら何か温かいの着た方がいいよ」
「…雪羽がいるからいい」
「わっ…」


言いながらその躰をすっぽり覆うように抱き締めると、びっくりしたのか腕の中でもぞもぞと小さく抵抗してみせる雪羽。

…が、もちろんそんな小さな抵抗で月代の腕が外れる筈はなく、月代は寧ろ力を強めて雪羽を抱き締めた。


「ちょっ、月代…」
「躰、冷えてきてるぞ」
「ん、一回放してってば…!」


動けないからか、ふるふると首を降って訴える雪羽に腕の力を緩めると、彼は再び窓の外に意識を移した。

窓辺に積もった、ささやかな雪。それを小さく固めて、ちょいちょいと形を整える。


「…何か赤い実とか、葉っぱとかあるといいんだけどな」
「…ゆきうさぎ、か」


雪だけで作られたそれは、随分シンプルなゆきうさぎだった。…けれど器用な雪羽らしく、不格好にはならない程度に形は整っている。

出来上がったそれを窓辺にちょこりと置いた雪羽を見て、月代は片手で窓を閉める。とりあえず物は出来上がっていたからか、雪羽から文句が出る言葉なかった。


「明日雪が積もったら、もっとちゃんとしたの作ろうかな」
「…その時は、ちゃんと温かくして行けよ」


呆れ気味にため息を吐いた月代は、冷えてしまった雪羽の躰が温まるまでずっと、その躰を離さずにいた。



珍しくもない、ある雪の日の話。















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都心で雪が振るのも、今年の冬はこれで最後かなぁ…。いや、もうそろそろ寒さも頑張らなくていいよ?

という訳で、寒さをぶっ飛ばしてイチャイチャする月雪夫婦でしたw ← 普段はしっかりしてるけど、たまに妙に突拍子の無い事をやり出す雪羽ですw

ゆきうさぎ可愛いよね、作るのは雪だるまの方が楽だけど(笑)


12/2/29

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