ねこゆきはと月代の場合(猫の日記念パラレル)
※ 2/22 猫の日記念パラレル。本編との関連皆無
『猫』、というのは愛玩用に造り出された、あまり公には知られていない生き物である。
飼い主不在の部屋の中、灰色の毛並みを持つ三角耳をひくりと震わせ、雪羽は気怠げに欠伸をした。
(月代、遅いな…)
陽が沈み闇が深くなってきた部屋。けれど雪羽は自ら明かりを点けに行こうとはしない。
“愛玩”する為に生み出された『猫』。…ただ人間の愛玩となる為だけの生き物ならば、自我は薄弱に、見目は麗しい方が望ましい。
(……そう言った意味では俺は“失敗作”)
我の強い意思と、特別良いとは言えない器量。唯一“愛玩物”として相応しい要素は、珍しい色合いをした虹彩、だろうか。
現に雪羽は、飼い主にその瞳を気に入られて此処にいる。…彼曰わく、それ以外の箇所も気に入って可愛がっていると言うが。
「……ふにゃ…ぁ」
ピンと灰色の尻尾を伸ばし、もう一度気怠げに欠伸をした。
飼い主の戻らない部屋は、ペットにとって酷く退屈である。
気晴らしにソファーに爪でも立ててやろうか、などとどうせやりもしない事を考えていると、人間のものより敏感な獣の耳が物音を捉えた。
パッと部屋が明るくなる。暗闇に慣れた玻璃色の瞳が、きゅうと瞳孔を縮めた。
「……ただいま、雪羽」
「…おかえり。遅いよ、月代」
ソファーから身を起こして応えれば、やっと戻ってきた飼い主はふっと唇を歪めて此方へ近付いてきた。
「悪いな、寂しかったか」
「……」
此処で、可愛い『猫』ならば、甘える言葉の一つでも紡ぐのだろうか。
雪羽はただ、大好きな飼い主の言葉に、表向きだけで膨れてみせるだけだけれども。
ピクピクと震える耳の後ろを撫でる月代に、それでも雪羽は心地好くて瞳を細めた。それを見た月代が、軽く笑う。
「……夕飯、出来てるよ」
「あぁ、ありがとう」
立ち上がってキッチンへ向かおうとすると、後ろから包み込むように抱き締められた。
「…!」
驚きに、耳がピンと立ち上がる。
肩越しに振り返ろうとすると、更に腕の力が強められた。
「何…」
「ん。可愛いなと思ってな」
「な…」
“可愛く”なんてない。そう言っても、月代は雪羽は可愛いのだと言い張る。
飼い主にそう言われる事で、雪羽がどんなに救われているかなんて、彼は知らないだろう。…けれど雪羽は絶対に、自分からそれは言わない。
触れ合いを喜ぶ気持ちとは反対に腕の中でじたばたと暴れると、月代は渋々といった調子で躰を離した。
「夕飯、食べないの」
「あぁ、食べる。…可愛い雪羽がせっかく、俺の為に作ってくれたんだからな」
「……なら、冷めないうちに早く食べて」
するすると雪羽の欲しい言葉をくれる、大好きな飼い主。
素直な気持ちとは裏腹に不機嫌そうな体を繕って視線を逸らすと、そんな事はお見通しなのか月代はクスリと愛しげに笑った。
素直ではないところがまた可愛い、俺だけの『猫』
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2月22日、にゃんこの日! 前々からこっそり考えていた、月雪でねこシリーズ派生です(笑)
一応ねこみやこさんと同設定なんですが、都が自分がどういう生き物かなんて全く自覚が無いのに対し、雪羽はある程度『猫』がどんな生き物なのかを理解してます。…甘い筈なのに何か薄暗くなった ←
ねこゆきはは作られた場所であまり出来の良い『猫』として扱われていなかったので、相当コンプレックスの強い子。飼い主の月代に強く依存してますが、素直に甘えられないツンデレっ子ですw ねこ万歳! ←
月代は変わらず溺愛の通常運転ですww ←
12/2/22
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