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今年も来年も

おおみそか!



「…あんたはいつも唐突なんだよ」


夏にも一度訪れた、月代個人に与えられているというマンションの一室。

年の瀬、大晦日。学生の身分にとってみれば、冬休み真っ只中の今日。つい数時間前に月代に電話で呼び出されたかと思えば、黒塗りの高級車で半ば拉致同然に連れてこられた場所が此処だった。

ソファーで小さく唇を尖らせる雪羽に、彼を膝の上に抱き上げた月代がくすりと笑う。


「俺はただ、お前と一緒に年の瀬を迎えたかっただけだ。…それとも、雪羽は違ったか?」
「……、そんな事は、ないけど」
「…俺と年が越せて嬉しいか? 雪羽」
「……ん」


相変わらず臆面も無く甘く気恥ずかしい科白を吐く月代に、雪羽は顔を赤くしながらもおずおずと頷いた。

頬を滑る指先にひくりと躰を震わせると、夜色の瞳が愉しげに細められる。


「…可愛いな」
「……っ」


可愛い。そう言って、月代は艶やかに微笑む。

男の自分に向かって可愛いも何もないと思っているが、恋人である彼にそう言われるのは少し嬉しくて…けれど、どんな反応をとっていいのかは分からない。

頬を赤く染めあげた雪羽がぽすっと月代の胸元に顔を埋めると、頭上で甘ったるい笑い声が響く。

後頭部を優しく撫でる指先に、ゆっくりと瞼を下ろした。


「……正月も、一緒にいてくれるの?」
「三が日はな。…一応、どこかで実家にも顔を出さないといけないが」
「…俺も父さん母さんに連絡入れとかなきゃ」


気付いたように呟くが、雪羽は月代の腕の中から顔は上げない。

一応、先輩の家に泊まるという旨は先程メールで伝えたし、…連絡は後でもいい。今はまだ、このままで。

すり、と額を彼に擦り付けると、軽いリップノイズと共に旋毛に触れる気配。


「…月代」
「ん、雪羽」


顔を上げると、すぐに下りてきた唇が重なる。


「…んっ…」


薄く唇を開いて彼を受け入れると、そのまま深く貪られた。絡みつく舌先に、拙いながらも応える。


「は……ぁ、…ん」
「…雪羽」


暫し互いの味を確かめ合ってから唇を離すと、こつ、と軽く今度は額がぶつかり合う。

深い夜色の瞳を細めて微笑む月代に、くすぐったいような倖せな気分を噛み締める。


「……年越し、どうしようか?」
「ベッドの上で過ごすんじゃないのか?」
「…っ、それだと、多分いつ年が変わったのか分からなくなるから」


あとで、と口にした雪羽は、誘うような言葉が恥ずかしいのか軽く唇を噛んで俯いた。


「…雪羽」
「あ、月代……んっ…」


どこまでも可愛い恋人に、煽られたように月代はその首元に顔を埋めた。

軽く喉元に吸い付き、紅い痕だけ残して離れる。


「…なら、こうして触れ合いだけ…な?」
「……、それだとやっぱり、時間忘れそ…」


照れを誤魔化すようにぽつりと呟いた雪羽に、月代はまたくすくすと笑った。



良い年の瀬を!














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年の瀬でも何でも、安定の月雪夫婦です(笑) なんか大晦日割と関係ない! ←

雪羽と二人きりで年越しがしたかったので、呼び出して拉致っちゃう月代さん ← 冬休みなので、一応二人とも寮じゃなくて実家に帰ってます。月代はともかく、雪羽一人息子なのにね。両親寂しがっちゃうよ?(笑)

当然のように年越し〜姫始めの流れですよね、分かります! ←


11/12/31

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