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某生徒会長の場合

※ 月代さんの淹れたお茶が不味い話。ジプというより、セントポーリアのこぼれ話





「…何これ、渋っ!」


月代から受け取ったカップに口を付けた瞬間、ベッドから半身を起こした姿勢の雪羽は盛大に顔をしかめて首を振った。

言われた月代はベッドに腰掛けながら僅かに眉を上げたが、自分の分のカップに口を付けると雪羽と同じ表情になる。


「…これ、紅茶だよな?」
「…あぁ」
「棚にある茶葉使ったんだよな?」
「……あぁ」
「…俺も普段使ってるヤツだけど、こんな味になった事ないぞ…」


なみなみと赤茶色の液体の満たされたカップを見下ろしながら、雪羽は呆れたように呟いた。

最初は面倒臭がってインスタントコーヒーしか置いていなかった雪羽だが、部屋に月代が居るようになってから飲み物の選択肢を増やした。

そう高級な訳ではない缶入りのセイロンの茶葉だが、雪羽が淹れた時は普通に飲める味であった筈なのに…。


「参考までに。…アンタ、マトモにお茶汲みやった事ある?」
「…あると思うのか?」
「……思わない」


僅かに顔をしかめた月代に質問を返され、雪羽はゆるゆると首を振った。

彼は金持ちの坊ちゃんだ。紅茶は自分で淹れるより、誰かに淹れて持ってきて貰うタイプなのだろう。


「…いや、一応生徒会室に併設された給湯室で淹れた事はあるんだが、最初の一度以来会計にやらなくていいと言われている」
「……妥当な判断だな」


カップを両手で包んだままの雪羽が、ため息を吐きながら首を振った。

月代も、自分が淹れた紅茶が不味い事は自覚しているのか、何も言わない。

…どうりで、月代が先程「ベッドから動けないからお茶淹れてきて」と言った時に微妙な顔をした訳だ。腕に自信がないなら、そう言ってくれれば良いのに。


「…仕方ない、後で教えるから、月代」
「は…?」
「は? じゃないって。アンタにもやり方さえ分かってれば出来るだろ? そんな難しい事してる訳じゃないんだから」


やる事を端的に言ってしまえば、紅茶の葉にお湯を注ぐだけなのだ。

ある程度「美味しい」と言える紅茶を淹れるには幾つかの注意点が必要になるが、月代はそんな“幾つかの注意点”を守れない人間ではない。


「知らない事なら、出来ないで当然。…でもアンタは、知ってる事を出来ない人間じゃないよな?」
「当然だ」
「ん。…てか、わざわざ教えて、今みたいな不味いお茶なんか淹れたら承知しないしな」


頷いた月代にクスリと笑うと、雪羽は両手で包み込んだカップに口を付けた。


「…こんな渋い紅茶を我慢して飲んでやるのは、今日で最後だからな」














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セントポーリアで「相当な紅茶」を淹れたと言われた、月代の後日談(笑)

時間軸は夏休み前でしょうか? 雪羽がいい具合にツンデレてるww

月代は別に家事音痴な訳ではなく単に“やった事がない”だけなので、やり方さえ分かれば人並み以上にはこなせるようになる筈。雪羽の為、日々良い旦那になっていきますねww


11/10/14

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