single ※ 恋人設定 「…なぁ、月代…」 「ん…?」 日付も既に変わり、二人、ベッドの上で微睡む時刻。 いつものように月代の腕にしっかりと抱かれながら、雪羽は重たくなってきた瞼を擦りつつ相手を見上げる。 「前から気になってたんだけどさ…」 「何だ?」 「…このベッド、狭いとか思わないの?」 ゆるゆると、眠気と先刻までの情の余韻で潤んだ玻璃を瞬かせながら、雪羽が実家から持ち込んだ、二人の眠るシングルサイズのベッドを示し訊く。 シングルサイズ、とはその名の通り本来は一人で寝る為のベッドである。 雪羽が中学に進学した頃に両親から買い与えられたそれは、雪羽が一人で寝る分には全く不自由しないし、それなりに愛着もあり気に入っている。…が、月代と二人で眠るのに適しているとはお世辞にも言い難い。 特に、月代は今時の男子高校生の中でも発育の良い部類に入る。そんな月代と、一応は平均並の雪羽。二人で一緒にベッドに入るのは、正直かなり窮屈だと思うのだが…。 雪羽をしっかりと腕に抱いた月代は、やや不安げな表情で首を傾げる恋人の髪を撫でながらゆるりと首を振る。 「……まぁ、広いとは思わないな」 「だろ? …月代デカいし、色々窮屈じゃないのかな、って…」 「…だから新しいベッドを買おう、っていう話か?」 「ん、俺、一応それなりに小遣い溜まってるし、…まぁそんな高いのは買えないけど…」 奨学生として学費の面では融通して貰っているし、食費は自炊でそれなりに抑えている。そして日用品には不自由しない寮生活のお陰で、両親が一人っ子の雪羽に与えてくれている小遣いを持て余し気味なのだ。たまには何か大きな買い物をしてもいいだろう、と思う。 「…月代はどう思う?」 「……とりあえず俺自身は、このベッドに特に不満はないんだが」 「え?」 首を振った月代に、雪羽はぱちりと瞳を瞬かせた。 そもそも、月代が窮屈だろうという前提でベッドの買い換えを提案しているのに…。 「狭いんだろ?」 「狭くてもいいじゃないか」 「…そうか?」 「雪羽は嫌なのか?」 雪羽を抱く腕に力を込めながら、月代は夜色の双眸を細める。 「…こうして狭い中でお前を抱き締めるのを、俺は結構気に入っているんだがな」 「え…」 紅梅の唇が妖しい艶を含んで笑い、雪羽はその言葉を理解した瞬間ぱっと頬を朱に染めた。 …場所が無いから、狭いから、と言って、いつも月代は雪羽を抱き込んで眠る。それは二人でこのベッドに眠り始めてからは毎度の事で、今更雪羽も疑問には思わないし、勿論嫌だとも思わない。 寧ろその姿勢でなくては違和感を覚えるくらいに、『当たり前』だ。 「…仮に広いベッドを買ったとしても、二人で使う面積はそう変わらないだろう。シングルだろうがダブルだろうが、キングサイズであろうが同じ事だ」 「…確かに…そうかも」 「だろう? …そんな余計な心配はしなくていいから、早くおやすみ、雪羽」 ちゅ、と頭を屈めて雪羽の目元に口付けし、月代は雪羽の髪を撫でながら囁いた。 …まぁ、月代がそう言うのならば、それでいいと思うけれど…。 言われた通りに瞼を閉じ、月代の胸元に頬を埋めながら囁く。 「……おやすみ、月代」 真夜中の、他愛もない二人の話。 ------------------ シングルベッドで二人くっ付きあって眠るのって萌えるよね、っていう話。前にも二次で同じようなコンセプトでSS書いた事がある気がする(笑) こんなシチュエーション好きですv 夏休みに月代のマンションに二人で泊まってましたが、そこのダブルベッドでも二人はくっ付いて眠ってました(笑) 何故ならそれが習慣だからww 11/5/23 ≪ ≫ [戻る] |