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無事にライブを終え、与えられた楽屋へ戻った唯人たちは、それぞれに顔を見合わせて笑った。


「だいせいこーう! いえーい!!」


ライブのテンション冷めやらぬ鈴が、高らかに言ってみんなでハイタッチを交わした。

きゃっきゃとハシャぐ鈴が翡翠にまとわりつくのを眺めつつ、唯人はふと楽屋の机の上に置きっぱなしだった携帯がちかちかと点滅しているのに気付く。

手に取って開いて見れば、先ほどのライブで最後方にいた友人の名前。

新着メールにサッと目を通し、唯人は緩く首を傾げた。


「…あの、龍治さん」


翡翠は鈴に捕まっている為、傍らにいた龍治を仰ぎ見る。


「…何だ?」
「友人が楽屋に来たいと言っているんですが…、大丈夫ですか?」


明良からのメールは、ライブが凄く良かったという感想と、一応差し入れもあるから楽屋に行ってみたいんだけど…、という要望との内容だった。

唯人としては明良が此処に来てくれるのはいいのだが、決まりとしては大丈夫なのだろうか?


「唯人がいいっていうなら、構わない。…裏から入れてもらえ」
「あ、はい。ありがとうございます」


僅かだが微笑んで言ってくれた龍治に、唯人はぱっと表情を明るくして頭を下げた。

その頭をくしゃくしゃと撫でられつつ、明良にメールを返す。…次からはもっと時間に余裕を持つように、と皮肉めいたメッセージを添えて。


「何〜、明良来るの〜?」


翡翠にじゃれついていた鈴が此方の会話を耳に挟んだのか、ぱたぱたとやって来た。

椅子に座った背中にのしっ、と乗り掛かられつつ、大して重くはないので唯人は携帯を閉じて普通に答える。


「はい、差し入れを持って来て下さるようですよ」
「へー、何かな、お菓子かなぁ?」


ケーキとかが食べたい気分、と言う鈴にとりあえずお茶の入ったペットボトルを渡していると、楽屋のドアが控えめにノックされた。


「どうぞ」
「唯人、鈴、…えーと、お疲れ様?」
「やほー、明良!」
「わ!?」


ひょいと唯人の背から退いた鈴が、ドアから顔を覗かせた明良に勢いよく飛び付く。

バランスを崩して倒れるかと思いきや、傾いだ明良の躰を後ろにいた影が支える。


「…っと、ダイジョブか〜?」
「…あ?」


間延びしたエセ関西訛りな美声に、龍治が眉を寄せた。翡翠も、軽く目を見張っている。

明良に飛び付いた姿勢のままの鈴が、彼らのリアクションにきょとりと瞬く。

何というか、この雰囲気は。


「…お知り合いですか?」


唯人が問えば、明良の背を支えた金髪の彼が笑う。


「ま、そんなトコやな〜。リュウ、スイ、お前らもお疲れさ〜ん」
「…来てたのか、利也」
「んー、迷子の仔猫ちゃんの付き添い?」


ふにっと明良の頬を指で突いた利也に、目を瞬かせたのは唯人と鈴。

…訊きたいことは幾つかあるけれど、とりあえずは。


「だから、『一人でも来られますか?』と訊いたでしょう…?」
「…ッ、時間はたっぷり余裕持ったもん…!」


拗ねたような明良の声が、楽屋に響くのだった。












バンドパロ10話目! ついに二桁ですw …またちょっと時間が開いちゃった(^^;)

ライブ終了後の楽屋にて。…ライブハウスの楽屋事情って、どうなってるか分からないのですがι 共用だったりするのかな? 全然知らないやι(駄目)


とりあえず、やっと名前の出た利也(笑) 前回は名前出しそびれたからね… ←


09/9/15〜10/5

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