clap log Z 仲村家の一角にある、防音処理を施されたレッスン室。 元々幼い頃からピアノやらヴァイオリンやらギターやら、様々な楽器を習わされていた唯人が使っていた部屋だが、小学校卒業以降は習い事の一切を止めてしまった為(親が飽きたらしい)ついこの間までは物置と化してしまっていた部屋だ。 が、つい先日鈴の思い付きに合わせて片付けられた其処は、適当なスタジオを借りるよりもよっぽど手軽な練習場所であった。 「唯人、其処の音はもう少し強い方がいい」 「…え、何処ですか?」 「…此処だ、十小節目のトコ」 「あ、はい。気を付けます」 龍治に指摘され、唯人はぱちぱちと瞳を瞬かせて譜面を覗き込む。分からずに訊き返せば、一緒の譜面を覗いた龍治がトントンと爪先で場所を示してくれた。 バンド結成と至ってから、約一ヶ月。練習を重ね、『honey』初ライブを翌日に控えた午後である。 「…あまり根を詰め過ぎるのも良くないな。そろそろ休憩にするか」 譜面とにらめっこする鈴の頭を軽く撫でながら、翡翠が顔を上げた。 その言葉に龍治が息をついてギターを置き、難しい顔で譜面とキーボードを見比べていた唯人が立ち上がる。 「じゃあ、俺は何か……そうですね、喉に良いハーブティでも淹れて来ます」 「ありがと〜」 メンバーを見渡した唯人は、マイクを玩ぶ鈴に目を止めてそう言った。意図を察した鈴がぱたぱたと手を振り笑う。 「手伝うか?」 「大丈夫ですよ。自分の家ですし」 「…いつも、邪魔をしてすまないな」 「いえ、どうせ物置同然の部屋だった場所です。本来の目的に使えるのなら、それに越した事はありませんよ」 埃臭かった部屋は、すっかり馴染んだ空間に。社交辞令でもなんでもなく、唯人はそれを良い事だと思う。それがメンバーの役に立つ空間になるのなら、それ以上に。 ぺこりと一礼してお茶を淹れに部屋を出て行った唯人を見送り、彼らはそれぞれに寛いだ。 持ち込んだソファーにちょこんと座り、鈴がしみじみと呟く。 「とうとう、明日なんですねぇ…」 「緊張するか?」 「いや、それはあんまり」 あっさり首を振った鈴らしい返事に、翡翠と龍治は小さく笑う。 「気取る事はない。いつも通りにやればいいさ」 「…まぁ、その点は鈴に心配は要らないだろうがな」 マイペースを地で行く鈴だ。誰の前に出ようが、いつも通りにこなしてみせるだろう。 唯人が出て行ったドアを見やり、龍治が呟く。 「…唯人はどうだろうな?」 「唯人はそれなりに緊張すると思うけど……。大丈夫、唯人なら」 ニコ、と無邪気も不敵に笑う鈴に、翡翠と龍治も表情を緩ませる。 「お前がそう言うなら、大丈夫なんだろうな」 「もちろんです!」 「……何がです?」 ちょうどお茶を淹れて戻って来た唯人が、器用に片手にお盆を載せたままドアを開けた。 元気の良い鈴の宣言に、首を捻る。 くるりと振り返った鈴が、びしりと指を突き付けて言う。 「頑張るよ、明日!」 「…えぇ、勿論です」 ふ、と笑った唯人が、先の鈴と同じ台詞で答える。 決戦は、明日 バンドパロ、7話目です。…ちょっと間が開いちゃいましたι はぅιι 練習風景編、…今回はちょっと内容が薄めですね。書いてる人がバンドの事、よく分からないからだったりして!(笑) 次はライブらしいけど、どうしようか、もっと分からねぇよ(爆) …多分、本番中の描写は短めで曖昧になると思います(^^;) ダメダメじゃないか ← 09/8/2〜8/10 ≪ ≫ [戻る] |