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微笑み合う二人をほのぼのと見つめつつ、翡翠は改めて口を開く。


「…改めて、答えを聞こうか」
「…喜んで、お受け致します」
「ます!」


丁寧に頭を下げた唯人と、元気良く手を上げた鈴。望みの答えと対照的な二人のテンションに、翡翠と龍治は表情を崩した。


「これから、よろしく」
「よろしくお願いします」


にこりと微笑む鈴の、小さな手を受け取る。その温もりに、自分は人肌になど久しく触れていなかったなどと思い出す。

何だかそれがこそばゆく、翡翠は椅子の背に掛けた上着を拾って立ち上がった。


「…さて、そろそろ時間も遅いな。こんな時間まで付き合わせてすまなかったな、小学生には危ない時間だろう、送って行こう」


翡翠としては、かなり長く喋った方だろう。照れ隠しの意味も含んでいたのだが、これが地雷となった。

言葉を向けられた鈴が、無表情のまま首を傾げる。


「しょうがくせい?」
「……あぁすまない、中学生だったか?」
「………、うわーん、唯人! 僕、そんなにちっちゃく見える!?」


棒読みの問いの後、返ってきた答えに絶叫。泣き真似をしながら、隣の友人にすがりつく。


「見えるか見えないかで問われれば…、まぁ見えますね」


すがりつかれた唯人は、ぽんぽんと鈴をあやしながらさりげに酷い言葉を吐いた。慰めにはまるでならない。


「………」


思いがけず相手を泣かせてしまった翡翠は、衝撃で固まってしまった。

彼をフォロー出来るとしたら龍治だけだが、彼は彼で鈴のリアクションに驚いているようなので不可能だ。

この中では唯一冷静を保っている唯人が、鈴の背を撫でながら言う。


「学生証をご覧頂けば、手取り早く理解頂けると思いますよ」
「ん!」


それを聞いた鈴はパッと顔を上げ、がさごそと鞄をあさって手帳を取り出す。手にしたそれを、鈴は高々と翡翠の眼前に掲げた。


「…『永峰鈴。私立灯燈学園高等部一年』………って、ウチの学校なのか!!?」
「…えっ、翡翠さん学校一緒!?」


翡翠の衝撃はかなり大きかったが、鈴もそれなりに驚いている。翡翠には気にしている余裕がないが、隣の龍治も驚いている筈だ。

…やはり一人だけ冷静な唯人が、軽く片手を上げて主張する。


「一応、俺も鈴と同い年ですよ」
「………中学生だと思ってた」
「…まぁ、一ヶ月程前まではそうでしたがね」


ポツリと溢した龍治の言葉に、唯人は穏やかに笑う。…つくづく、鈴とは対照的なリアクションだ。


「…ちなみに龍治さんたちは?」
「…俺たちは高二だ」
「一つ上なんですね」


ふふ、と小さく笑う唯人と、まだ少し心が着いて行かない龍治。

翡翠と鈴は、未だ対峙し合ったまま固まっている。


「…面白いメンバーになりそうですねぇ」


唯人の呟きに答えられる余裕のある者は、誰一人として居なかった。








あれれっ、長いっ! 書きたいところまで書いちゃえー、と思ったら予想外に長い、バンドパロ4話目です。

晴れてバンドを組む事に至った四人です。これからが本番!


…そして、最後のシーンが今回一番書きたかったところだと言っても過言ではないです(笑) 小学生だと思われてる鈴、うん、楽しかった(爆)

そして、ここでもやっぱり冷静な唯人ですw


09/6/6〜6/19

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