ジプソフィラ 4 ※ 「んっ、やっ…あぁ、だめぇ…」 「…すっかりぐちゃぐちゃだな…」 「あっ、あぁっ…! だめ、だめ…」 くちゅくちゅと粘着質な水音をたてる自身に、耳を塞いでしまいたくなる。 けれど雪羽が耳元に手を運ぶ前に、月代に先手を打たれてしまった。 「っ…! やだ、はなしてっ…!」 「放したらどうするつもりだ? いいから、自分の音を聞いておけ」 「やっ、やぁっ…!」 雪羽の自身を扱くのとは反対の手で、手首を一まとめにされた。 …平均的な高校一年生の体格をしていると思うのに、簡単に捕まえてしまう相手が憎らしい。 雪羽がせめてもの抵抗で相手を睨もうにも、快楽に直ぐに声が漏れてしまう。 「…その目、可愛いな」 「っ…あっ!」 「そろそろ出そうか?」 淫らな水音は大きくなっていて。同時に、月代の手の動きも更に速さを増す。 「やっ、あっ、も…だめっ…!」 「…イきたいか? 雪羽」 来るであろう刺激に身構えるも、予想していたそれはなく。 代わりに惚れ惚れする程美しい容貌が、雪羽の顔を覗き込んでいた。 …深い夜色の瞳に、快楽に歪む自分の顔が映り込む。 「やっ…」 「イきたいか、と訊いているんだがな」 「あっ…!?」 ややトーンを落として囁かれた声と同時に、今まで雪羽に刺激を与えていた大きな手が離れた。 中途半端のままに投げ出された其処は、ヒクリと刺激を望むようにいやらしく震えた。 「ぁ…」 「どうだ雪羽、イきたいか?」 繰り返される、淫らな問いかけ。間近で自分を映し込む、深い夜色の瞳。 …劣情が、羞恥を塗り潰す。 「イ…きたい…」 「そうか。では、“お願い”出来るな?」 「おねがい…?」 快楽を求める雪羽は、相手の言葉に不安げに瞳を揺らす。 紅梅の唇が、弓張り月に歪んだ。 「俺の名前を呼んで、『お願い』って言ってご覧? 雪羽…」 「なまえ…」 「『月代』だ。呼べるだろう、雪羽」 幼子に言って聞かせるような、甘い口調。 熱に浮かされた雪羽は、促されるままに言葉を口の端にのぼらせる。 「つき…しろ、」 「ん?」 「おねがい…」 「ふっ、…よく出来ました」 月代の顔が、愉悦に歪む。 間近のそれをぼんやりと認知した雪羽は、次の瞬間の刺激に一際疳高い声をあげた。 「やっ、あ、あぁ────っ…!!」 雪景色の様な“白”の視界の中、 夜半の様な、“黒”が見えた。 ≪ ≫ [戻る] |