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ジプソフィラ
11

* * *



ふわふわと、意識が宙に浮いているみたいだ。

月代と躰を重ねた後は、いつもそう。…そんな感覚も嫌いではないと思ってしまう自分が、少し嫌だ。


「…ぁ…」
「…気付いたか」


瞼を開け掠れた声を出した雪羽に、ベッドに腰掛けていた月代が振り向き、そっと雪羽の額に手を触れる。

雪羽の全てを暴いた後の月代の手付きは、ただ優しい。

身じろぎすれば躰が痛むだろうから、雪羽は視線だけを動かして彼を見上げた。


「…風呂、は…」
「シャワーは浴びさせておいたから、安心しろ」
「…俺、覚えてない…」
「気持ち良く眠っていたようだからな」


憮然と呟いた雪羽に、月代は夜色を細めて艶やかに笑う。


「否、気持ち良よすぎて眠っていた、か?」
「…阿呆…」


一体誰のせいだと思っているのか。

意識を失うまで何度も貪られた躰はくたくたで、言い返す気力さえ起きない。

ベッドにぐったりと躰を沈めた雪羽に月代はまた小さく笑い、ベッドに横たわった。

平均的な男子高生と発育の良い男子高生の二人が余裕をもって眠れる程雪羽のベッドは広くはないので、月代は雪羽を抱き込む事で寝場所を確保した。


「…んっ」


月代に引き寄せられた事によって、彼に貪られた躰の節々が痛みを訴える。

不満も含めて月代を見上げれば、彼はそっと雪羽の頬にかかった髪を払った。


「…痛いんですけど」
「…あぁ、躰か」


不満気に声を出せば、何でもないように返ってくる。


「…うぁ、明日、立てないかもしれねぇよ、莫迦…」
「そうなったら、朝食くらいは作ってやる」
「…この前トーストを黒こげにしてたアンタが、か…?」


雪羽が疑いを含んだ眼差しで見つめれば、彼にしては珍しく数秒口ごもった。

ややして、少しバツの悪そうな声。


「……、一度失敗した事は、もう繰り返さない」
「今度はちゃんとトースターの焼き色調節しとけよ」


そんな彼の態度が珍しく、雪羽は小さく笑った。

クスクスと月代の腕の中で笑い声をたてていれば、やや不満そうにした彼がちゅっと可愛い音をたてて軽やかに唇を奪った。

不意打ちに、雪羽は軽く面食らう。


「………ッ」


躰を重ねている最中になど何度も深く唇を貪り合っているのに、何故か軽く触れただけのそれが恥ずかしい。

白い頬を上気させた雪羽が月代の胸に顔を埋めると、頬や顎をなぞっていた指が襟足にかかった毛先を梳く。


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