ジプソフィラ
10 ※
「ひあぁっ、…ぁっ、あぁっ…!」
「…っ」
耳元で疳高く喘がれ、月代は眉を寄せた。…悩ましい声だ。どうしようもない程に、雄を煽る。
「…もっと啼け、雪羽…」
「…ぁっ、あんっ! ゃ、月代、…激しっ…!」
「俺だけを見て、感じていればいい…」
快楽に耐えかね、ぱさぱさと髪を乱して首を振る雪羽を覗き込みながら、唸るように囁いた。
生理的な涙に濡れた玻璃色の瞳が、劣情に狂う月代を映している。
…自分だけを映すその瞳。堪らない。
「やぁっ、月代…っ、もっ、ぁ…だめぇ…!」
「…く…、イきそうなのか?」
「ぁっ、もっだめなのっ…! イきた…っ!」
懇願染みた声も可愛いが、本当の“懇願”が聞きたい。
その可愛い声で、自分に強請って欲しい。
月代はわざと雪羽が感じる場所からポイントをずらし、意地悪く笑いながら囁く。
「…イきたいなら、どうするんだ? 雪羽…」
「あっ…ぅ、や…! そこ、ちが…」
「…ほら、何て言うかは知ってるだろう…?」
玻璃の縁からこぼれ落ちた雫を舐めとりながら、月代は甘く囁いた。
…甘えたがりの雪羽。自分に甘く囁かれるのを彼が好んでいる事くらい、知っている。
潤んだ玻璃からまたその欠片が伝い、甘く鳴き声を漏らす水蜜桃の唇が開かれる。
「…おねが、い…月代…、もっと奥に、ちょうだい……、イかせて……!」
「ふっ…、よく出来ました」
幼気な唇から紡がれた言葉に、月代は紅梅を歪ませ笑った。
自分だけを映し、自分だけに強請るその愛らしい存在。…満たされる、細やかな雄の独占欲。
「…良い子の雪羽に、ご褒美をやろう…」
「ひぁぁっ…! ゃっ、すごっ…!」
「俺の、雪羽…」
「…あっ、あ…月代…!!」
何より敏感な最奥へ自身を叩きつけるように突き上げ、ビクリとしなる細い背へ腕を回した。
絶頂へ、昇り詰める。
「やっ、あっ……ぁ、あぁぁぁぁ───っ!!!!」
「く、ぅ…っ!!」
一際高らかな嬌声と共に雪羽は達し、その瞬間の締め付けに耐えきれず月代も追い掛けるように絶頂へ達した。
ドクリ、蕩けて熱い内に、欲望の全てを注ぎ込む。
「ふ…ぁ…」
恍惚としたような、雪羽の声。
奥に注がれた熱に焦点の合わない玻璃を、月代はその頬を軽く叩く事で此方へ向ける。
熱に浮かされた雪羽の瞳は、相変わらずどんな宝石よりも綺麗だ。
「…ん、月代…」
「此方を見ろ、雪羽…」
「…見てる…、見てるよ…」
玻璃色が少しだけ細められ、雪羽は蕩けたようにふにゃりと笑った。
月代は、その瞳の縁に確かめるように口付けを落とす。
「俺のモノだ…雪羽」
「…うん」
こくり、と幼い仕草で頷く雪羽に、月代もまた夜色の瞳を細めた。
…欲しいのは、その瞳だけではなく、存在全て。
すり替わった月代の言葉の不自然さなど、おそらく雪羽は、気付いていないのだ。
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